年収100万円に転落した人たちの共通点
こうしたケースが多くの企業で常態化し、低賃金かつ激務にさらされる「ハードワーキングプア」が急増中だと社会福祉士の藤田孝典氏も警告する。
「グローバル経済下で株主や内部留保に資本が回る一方で、人件費や福利厚生は削られるばかりです。かつては福利厚生を含めて年収500万円で雇われていた人々が、今や福利厚生なしの年収200万円も珍しくはありません」
こうした状況が劇的に改善される見込みはなく、だからこそ個人の意識改革が重要だという。
「まずは周囲と賃金を比較して、自分の待遇を客観視すること。ブラック職場の場合、多忙すぎるので感覚がマヒしてしまうことも多いです。また外部でもいいので労働組合に加入する手も。組合は職場がブラック化したときの保険になります。普段からの人間付き合いも重要です。孤立は何より生きる気力を奪い、転落の大きな要因となります。また少しでも余裕があれば、今の仕事に関連する資格を取り、キャリアアップを図る。そして政治に興味を持ち、選挙に行くこと。投票の重要性はもちろん、候補者を吟味する過程で社会保障の知識も身につくはず」
年収100万円時代がすぐそこまで迫っている。その現実を他人事とせず、貧困のスパイラルに備えるのは必要不可欠なのだ。
<年収100万円に陥らないための5つの自己防衛策>
1.周囲と給与を比較する
2.政治に関心を持つ
3.労組に入る
4.資格を取る
5.人との繋がりを持つ努力をする
【増田明利氏】
ルポライター。20年以上にわたり低所得者、ワーキングプアを精力的に取材。ブラック職場への潜入取材などもこなす。著著に『貧困のハローワーク』ほか
【藤田孝典氏】
社会福祉士。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学准教授。貧困、ブラック企業問題に取り組む。近著に『続・下流老人 一億総疲弊社会の到来』
取材・文・撮影/高島昌俊 福田 悠 古澤誠一郎 宮下浩純 撮影/岡戸雅樹 岡村隆広
― 密着ルポ[年収100万円生活]の恐怖 ―
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『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-』 この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!? |
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