「仙人」がヘリで救助された小幌駅
◆泣ける駅編
なんにもなさそうな小さな駅。しかしそこには、聞くも涙、語るも涙なドラマが……
【CASE9】
「仙人」がヘリで救助された小幌駅
北海道にある室蘭本線の小幌(こぼろ)駅は海にほど近い、列車か船でなければ訪問困難な秘境駅。大自然に抱かれた人家ひとつない場所で、釣り人や鉄道マニアがまれに利用する程度である。そんな小幌駅に数年前まで、ひとりの男性が住み着いていた。
風体こそ怪しくとも、意外と話し好きな彼は、たまに来る訪問者と会話をすることは珍しくなかった。また彼は訪問者のためにか、駅周辺の海がよく見える場所にベンチも設置していた。もちろん、駅に住むのは許されない。だが、場所が場所であるほか、一説では、駅の除雪を行う代わりに黙認されていたともいう。果たして何が彼をそうさせたのか。さまざまな憶測が飛び交うなか、世俗の喧噪から遠く離れた秘境の駅で独りつましく暮らす男はいつしか「仙人」と呼ばれ、鉄道ファンの間では、有名人になっていた。
しかし’07年1月、テレビで衝撃の映像が流れる。警察特集の番組で、衰弱した仙人がヘリコプターで救出されていたのだ。俗世間を離れ北の小さな駅で暮らす男が、その末期迫ったとき、図らずも全国ネットに登場しようとは……。
同年、仙人はこの世を去った。最期は再び20年近く暮らした小幌駅に戻り、旅立ったと言われている。彼が亡き後も小幌駅の象徴として語り継がれ、ある意味では歴史に名を刻んだ人物なのだ。
― 日本全国[珍駅/泣駅]途中下車のススメ【10】 ―
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