酒井穣氏「形だけの敬意を払われる「年上部下」になったら、キャリアは終了です』
―[明日は我が身の[年上部下]の本音]―
ベストセラー『はじめての課長の教科書』著者・酒井穣氏が指南
形だけの敬意を払われる「年上部下」になったら、あなたのキャリアは終了です
「年上部下」と「年下上司」。成果主義が生み出した、このねじれた関係。このややこしい問題、一体どうしたらいいのだろうか。ベストセラー『はじめての課長の教科書』著者の酒井譲氏に話を聞いた。
「年上部下」と「年下上司」。成果主義が生み出した、このねじれた関係。このややこしい問題、一体どうしたらいいのだろうか。ベストセラー『はじめての課長の教科書』著者の酒井譲氏に話を聞いた。
「入社年次を過度に重視する日本の社会は、たしかに異常です。しかし、理不尽な上下関係は、どの国にもあるものです。年上部下の人は、『社会は公平にできていない』という大前提を認めたうえで、自分に何ができるかを考えていくべきなんですよ。年上だからというだけで上司から敬語を使われる『形だけの先輩』になってしまっては、キャリアは終了ですから」
年上部下は、まず「年上なのに部下」という現状を承認する。そして不満を溜めるのではなく、「モチベーションコントロールに利用することが大事」と酒井氏は話す。
「悔しい気持ちを腐るネタにするか、それをバネに仕事に向かうかは自分次第です。嫉妬や不満はモチベーションを上げる材料にもなるので、上手に活用すべきです」
しかし、そのように自ら変わることもなく、燻り続ける年上部下もいる。そんな部下に、頭を悩ます年下上司はどう対処すべきか。
「人間は『他人に変えられる』ことがキライな生き物です。だから、『自分から変われる』ように促すこと。仕事も一方的に命令せずに、『この案件はどうしましょうか』と持ちかけるのがいい。相談は非常に有効。そして、意見を聞いてほしいときこそ一歩下がるという、謙虚な姿勢が大事。人間は自分の意見を妄信しているとき、他人の意見を聞けないんですよ」
一方で、お互いに気遣うあまりに本音を言えず、冷え切った関係に陥ってしまうパターンもある。
「『沈黙』はそれ自体が、相手への期待度の低さを伝えてしまいます。小さなことでも褒めたり叱ったり、質問したり、アドバイスしたり……コミュニケーションをして、相手の”本気”を取りに行くべき」
と、アドバイスをしつつ、酒井氏は「年下だ年上だなんて騒いでいる職場はヒマすぎ」とバッサリ。
「例えば、戦場で上官が年上か年下かなんて言ってられないですよね。年上上司も年下部下も視点を外に向けるべき。”外”に目を向けたら、今の日本、そんなこと、言ってられないのがわかりますよ」
【酒井穣氏】
’72年、東京都生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、オランダTilburg大学にて経営学修士号(MBA)を首席取得。’09年春より活動拠点をオランダから東京に移し、現職はフリービットの戦略人事部ジェネラルマネージャー。著書『はじめての課長の教科書』はベストセラーに
【円滑な関係を築くための心得・3か条】
一、人間は他人に変えられることがキライ
二、「沈黙」は相手への期待度の低さを伝える
三、意見を聞いてもらいときこそ、一歩下がる
取材・文/笠原ネコ、田山奈津子、古澤誠一郎(オフィス チタン)、港乃ヨーコ、吉田峰子、鈴木靖子(本誌)
― 明日は我が身の[年上部下]の本音【11】 ―
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