「老人ホームランキング」があてにならないワケ
さらに濱田氏が最大の課題だとするのが、アンケートの信ぴょう性だ。先に書いたように、ランキングは主に事業者に対して行ったアンケートをもとに行われる。結果として、「あれもできます」「これもできます」と回答する事業者ほど、上位に来やすいことになる。ここに問題があるのだと警鐘を鳴らす。
「ほとんどのランキング記事で、アンケートの回答結果について、第三者のプロや識者による精査が甘いと言わざるを得ません。要は、“正直者が馬鹿を見る”という状態になっているのです。そもそも『あれもできます』『これもできます』という介護事業者は素人であるというのが、私の持論です。たとえば、認知症高齢者といっても、寝たきりの方と、歩行が可能な方では、まったく介護への考え方や方法は異なります。ですから、懸命な事業者であれば、おいそれと『できます』と答えられないはずなのです」
きちんとした老人ホームや高齢者住宅の事業者であれば、「認知症OK」「医療OK」と安易に答えないし、かといって「認知症の人は即NG」「医療行為が必要な方は即NG」とも答えない。きちんと個別にアセスメント・ヒアリングを行ったうえで判断しようとする。そうした事業者側の“姿勢”が判然としないランキング形式の記事は、信用に足らないと言えそうだ。
【濱田孝一】
経営コンサルタント、社会福祉士、介護支援専門員、ファイナンシャルプランナー。1967年生まれ。立命館大学経済学部卒業後、銀行に入社。以後、介護スタッフ、社会福祉法人マネジャーを経て、2002年より介護ビジネスや高齢者住宅についての経営コンサルティング、講演、書籍執筆を行う。最新著に『「老人ホーム」大倒産時代の備え方 高齢者住宅を正しく見極める』が好評発売中。
<取材・文/日刊SPA!編集部>
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