「野生」をむき出しにした人間はここまで狂う! 映画『光』主演の井浦新を直撃
実はこの共演、主演の井浦自らが希望したものだという。
「数年前に大森監督と飲んでいたときに『どんな役者と共演してみたいの?』と聞かれたんです。普段は誰となんて言わないのですが、『瑛太くんとは中途半端な競演じゃなくて、お互いに神経をすり減らして立っていられないくらいのバチバチの芝居ができる相手だと勝手に思っている』と言って。そういうなかで監督が『新と瑛太を組ませられる作品を用意しているから「光」という作品を読んでおいてくれ』と。そしたらすごい作品で」
そうして数年の構想を経て撮影を迎えたわけだが、井浦のなかでは特に準備をすることもなく、あくまで自然体で入ったそうだ。
「もちろん、セリフは覚えていきましたけど、準備はそれのみでクランクインしました。なぜかというと、大森監督の現場って、芝居からにじみ出てくる人間同士のぶつかり合いを撮るんですよ。だから台本を読んで頭で考えたことは通用しないし、求められていない。それよりも『なんで俺、こんなことしたんだろう』っていう、自然と出てくる、想像がつかない表現が求められている気がして。理屈じゃない人間そのものの姿というか。だから『大森組がこれから始まるぞ』っていう心を整えるのが、準備といえば準備でした」
物語が後半にいくにつれ、信之と輔、そして女優として大成していたもう一人のメインキャスト・美花との関係に暗い影が落ちていく。2人からカネを引っ張ろうとする輔と、過去を隠すために信之をけしかける美花。輔が暮らす古ぼけたアパートで信之と思い出話をするだけのシーンにもかかわらず、次に訪れる展開が怖くて仕方がないのだ。
「けど、撮影以外で瑛太くんとの思い出といえば……あんまり話さなかったことで(笑)。お互いに役に入っているからという感じでもなくて、なんかほどよくお互い緊張した状態にいたんです、体が。お互いがそっぽを向いているような感じでもないんですけど、それが心地よかった。芝居ではバチバチしゃべるんけど、カメラを回していないときはお互いが同じところを見ながら集中していて、いい緊張感を持っていられたんだなぁって」
さらに本作の音楽は、テクノミュージックの巨匠、ジェフ・ミルズが手掛けている。「彼がやってくれると知ったときに、絶対に作品の世界と合うと思った」(井浦)と言うように、離島の深い緑や、町場の工場、古アパートの景色とテクノが重なり、観る者に強烈な印象を与えてくれるだろう。
日本での公開に先立って、第12回ローマ国際映画祭でも公式上映されて絶賛された本作。高確率でトラウマになりそうな強烈な出来栄えを、ぜひスクリーンで確かめてほしい。
<取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/渡辺秀之>
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■映画『光』公式サイト(http://hi-ka-ri.com/)
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