かわゆくミミズ腫れになっていたジャンボさんの胸板――フミ斎藤のプロレス読本#149[馬場さんワールド編4]
“若大将”なんてニックネームで親しまれてきたジャンボさんも、さすがにちょっとだけオジサンになった。
「ぼくにしてはいい試合ができたかな。プロレスはいちばんの薬ですよ」
そうだった。ジャンボさんは体をこわしてリングから遠ざかっていったのだった。
いまジャンボさんは、大学の教壇という新しいリングに立っている。この日も日本武道館に来るまえに“90分3本勝負”を闘ってきた。
主戦場は慶応大学の藤沢キャンパス。運動生理学の講義をしながら、たまにカリキュラムの一部として“ジャンボ鶴田名勝負集”のビデオを学生たちにみせたりしている。
ジャンボさんは、プロレスを学窓に持ち込んだ最初のエリート・アスリートということになる。
「毎日やっているとわからないかもしれないけど、たまに上がると感じる、やっぱりいいもんだなと。幸せですよ……」
ジャンボさんは、しきりにそんなことを口にしていた。体調がよくなったら、もうちょっと試合数を増やしていきたいと考えているようだ。
「先生はこれから試合をしてくるからね」といって教室を出てきた。
ジャンボさんはちいさなイスにかがみ込むようにして座り、おしゃべりをつづけていた。セコンドについていた井上雅央がリングシューズのヒモをほどこうとすると、ジャンボさんは「いいよ……」という感じでその手をやさしく止めた。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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