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“元ひきこもり”による“ひきこもり”のためのメディア 「ひきこもり新聞」のあくなき挑戦

ひきこもりは日本だけの問題じゃない

ひきこもり新聞

ウェブ版にはオリジナルコンテンツが豊富に揃う

 創刊からは隔月ペースで発売を続け、先月には無事に1周年を迎えた。ただ、その裏側は順調などとは程遠い状況だったという。 「やっぱり完売まではなかなか。知名度も全然低いですし、メインの読者であるひきこもりの親御さんにも全然情報がいき届いていませんね。あと、号を重ねるごとに顕在化してきたのが人手不足で……。スタートメンバーは今も関わってくれているんですが、やっぱり元気になってくるとみんな就職して働きだしますから(笑)。少しずつ新陳代謝しながら1年続けてこられた形です。できればなんとか10年くらい続けていけたらと思いますけどね」  では、これまでの記事の中でも思い出深いものはどれか? 「やっぱり田中慎弥さんにインタビューをさせてもらえたのは嬉しかったです。新聞と名前はついているけど、ほぼ無名なメディアですから。それに芥川賞作家に出てもらえたのは大きかったです。あと、記事ではないですけど、いろんなひきこもりの方からの連絡が来るようになったのは大きかったなと思います。なかには、『まさに暴力支援団体の寮に今入れられているんです。助けてください』といった人から連絡がきたりするので」  また、ウェブ版独自のオリジナルコンテンツも多彩だ。なかにはミラノ在住のイタリア人心理学者と日本人当事者による、ひきこもりに関する対談連載などもある。 「それは、イタリア人心理学者のマルコさんから僕らにメッセージが届いて始まった連載なんです。スタッフに英語が堪能な人がいて、ウェブ版に英語版を載せたことが大きかったようです。実はひきこもりの問題って世界中で起きていることなんですよ。斎藤環先生のもとで研究している人には外国人の人もいますし、そこの中国人いわく『中国にもいっぱいいるし、これからドンドン問題になってくるはずだ』って。だけど社会的に調査されていないから、問題視されていないようです。イタリアは比較的早く引きこもりが認知されている国なんですが、新興国ではこれからもっと問題になると思いますし、日本も対策はまだまだですよね」  ただ、最近になって明るい兆しも見えてきている。それは、当事者同士が繋がろうとするアクションの増加だ。 「ひきこもりの人同士がつながるための場所とかイベントが増えているんです。女性だけが集まる引きこもり女子会も話題になりました。僕は『人間関係がない人=ひきこもり』だと思っているんです。これは誰にでもそうなる可能性があるはずだし、そうなったときに力になれる情報をこれからもっと発信していきたいですね」 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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