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富岡八幡宮事件で誰もが思った「神社はそんなに儲かるのか」の謎 お賽銭やお守りは課税の対象外!?

絵ハガキやキーホルダーは課税対象

 ただし、これらの物品の中にも課税の対象になるモノが存在する。その例として、キーホルダーや絵ハガキ、陶器などがあげられる。  これらの物品は、神社以外の施設でも販売、購入が出来るため、収益事業と判断され、課税の義務が生じる。ただし、線香やろうそく、供花の一部は、神前、仏前等に捧げるという信仰目的の用途が明確であれば、喜捨金に分類されるという。  今回、事件で注目を集める富岡八幡宮には毎年約20万人が初詣にやってくるという。その約20万人全員がお賽銭として10円投げ入れたとすれば、単純計算でそれだけでも200万円の利益が生じる。とはいえ、実際のところ個人のお賽銭の金額は人それぞれ。なかには千円以上入れる人もいるはずだ。また、同神社では錦袋のお守りが800円、絵馬も安いものが800円で販売されている。これらの収益を前述のお賽銭の収益にプラスすればけっこうな額になるのではないか。  もちろんお賽銭やご利益グッズで得た利益は神社の貴重な収入源であることは間違いない。しかし、実のところ神社の主な収入源は祈祷であり、厄払いや七五三、縁結びや商売繁盛の依頼がそのほとんどを占めているとも聞く。  富岡八幡宮の祈祷料は個人で5000円、法人で1万円、一番高いもので5万円となっている。富岡八幡宮は有名で歴史ある神社であるため、祈祷だけでも十分な利益が生じているといえよう。

パワースポットブームやアニメ聖地巡礼の恩恵も!?

 2010年頃大流行したパワースポットブームも神社の経営に大きくかかわっているかもしれない。いくつかの例をあげていきたい。  島根県にある出雲大社は縁結びのスポットとして注目されるようになった。近年は若い女性の参拝客が増加したという。無論、出雲大社でも縁結びのお守り等が販売されており、これらが収入源のひとつとなっていることは想像に難しくない。  また、東京都早稲田にある穴八幡宮は金運アップのスポットとして知られ、毎年年末になると、同神社のお守りを買い求めに全国から参拝客が押し寄せる。
お守り

商売繁盛のご利益があるとされる穴八幡宮の守護符

 さらに、埼玉県久喜市に位置する鷲宮神社は、アニメ『らき☆すた』の舞台として登場したことで、同アニメ放映直後の2008年の初詣参拝客は例年の2倍近い30万人にのぼったという。鷲宮神社はアニメファンの間で、アニメキャラクターの描かれたいわゆる痛絵馬を奉納することが恒例となっており、ブーム終息から約10年経った今でも、境内で痛絵馬が見られる。
痛絵馬

鷲宮神社に奉納されている“痛”絵馬

 このように、世間の流行は、神社の経営と密に関係しているといえよう。

宮司丸儲けにならないように対策がされている

 とはいえ、お賽銭やご利益グッズで得た収入がそのまま宮司(個人)の収入になるかといえば、そうではない。宗教法人の収入と個人の収入を分ける必要があるという。  国税庁のホームページには、お賽銭などの喜捨金は、宗教活動に伴う収入や宗教法人の資産から生ずる収入は、すべて宗教法人の収入になると記載がある。つまり、お賽銭やご利益グッズで得た収益がまるまる宮司の収入になるわけでなく、その収益から宮司の給料が支払われているのだ。このように国は、坊主丸儲けならぬ宮司丸儲けのような状態を防ぐ対策をしている。  ――宗教法人は一般企業と比較し、税金面で優遇されているように思えるが、誤解をしてはいけない。それはあくまでも文化や伝統を後世に残すという役目を担っているからであり、お賽銭やご利益グッズで得た収益は、文化財を護るための維持費なのだ。  しかし、富岡八幡宮のような大規模な神社は、初詣の参拝客を始め、年間を通し多くのひとが訪れている。そのため、喜捨金で得た収益が神社自体の収入になり、そこから宮司の給料が一定額支払われていることから、その給料は高額であったことが予想されるだろう。<取材・文・撮影/相模玲司>
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