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京アニ模倣犯でよみがえる地下アイドルの恐怖体験「優しいファンが“怖い人”に」

 今年3月、徳島市においてアイドルグループのライブが開催された雑居ビルに放火し、現住建造物等放火容疑などで30代無職男性が逮捕された。そして来る4月9日、その犯人男性が「京アニ事件のマネしてやった」と供述。多くのメディアがそのことを報じ、Twitterのトレンドに「京アニ」というワードが浮上し話題となった。
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※写真はイメージです(以下同)

 小さなライブハウスを拠点として活動する、いわゆる地下アイドルたちは、メジャーシーンで活躍するアイドルに比べ、客との距離が非常に近く、この事件のようにトラブルに巻き込まれるケースも少なくない。約10年間、東京都内でアイドル活動に励む松本恵理子さん(仮名・29歳)も、長い活動を通し、身の危険に晒されたことのあるアイドルの一人だ。

優しいファンが怖い人に豹変、オフ会を襲撃される

 松本さんは数年前、とある男性客からイベント開催の話を持ちかけられ、それがトラブルへと発展した。彼女は当時のことを振り返りこう語る。 「いつもライブに来てくれる常連のお客さんからライブ終了後の物販の時間に『俺のコネで、タダで会場を借りてイベント開催出来るからやろう! イベントの内容も一緒に考えてあげるからさ!』と誘われました。その時の私は、頑張り時だと思っていたのと、乗らなきゃその程度のやる気しかないやつだと思われる気がして、すぐに承諾してしまいました。『松本さんは今凄く良いから、今やろう! こういうのは今すぐやらなきゃ!』っていう感じでぐいぐい来られたのも即決してしまった理由です。  イベントの内容も、私にしか出来ないことだと思っていたので、これをやればもっとファンに認めてもらえるだろうという期待感も大きかったです。その時は、とにかく頑張らなきゃ、頑張らなきゃという、余裕の無い状態でした」  男の話をチャンスだと思い、イベント開催に全力をかけていた松本さんだったが、後日、その男と連絡を取った際、話が噛み合わないことが非常に多く、次第に不安を感じるようになったという。そして彼女は悩んだ末、イベントを中止にしようとした。しかし、男はその申し出を聞き入れてはくれず、松本さんはある決断をすることになる。 「このままだとイベント主催者として何かアクシデントが起こった時、責任を取れない。そう思って、イベント当日、他の演者さんとお客さんたちへ個別に連絡、事情を説明して納得してもらい、急遽別会場でオフ会をすることにしました。もちろん話を持ちかけてきた男性にはそのことは伝えていません。完全にその人から逃げるような形で実施したオフ会です。ですが、どういうわけか、彼は私たちの居場所を突き止め、オフ会へ乗り込んできました」

大声で『ふざけんなよ!』と喚き散らし…

 そう話す松本さんの声はどことなく震えていた。そして彼女は重い口を開きこう続ける。 「まさか乗り込んでくるとは思わなかったので、本当にびっくりしました。私たちの他にもお客さんがいるのにも関わらず、どたどたと入ってきて大声で『ふざけんなよ!』と喚き散らしていたので、とても怖かったです。このトラブルが起こるまでは、積極的に応援してくれる優しい人だと思っていましたが、向こうの思惑通りにいかなくなった途端、怖い人に豹変したのは本当にショックでした」  男の様子があまりにも常軌を逸していたため、暴力沙汰を恐れた松本さん。彼女は他の演者たちと協力して男を店の外へ連れ出し、なんとか彼の怒りを鎮め事なきを得たという。  運良くその場を収められたから良いももの、一歩間違えたら松本さんが恐れていたように、暴力沙汰へと発展する可能性もあったわけだ。そして、彼女と協力して男を追い返した演者たちもか弱い女の子である。暴徒と化した男と話し合うのは非常に怖かったに違いない。松本さんやオフ会参加者たちが無事で良かった。
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迷惑行為をしている側は、その行為を迷惑だと理解出来ていない
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