高級駅弁で帰省の道中を優雅に過ごす 香箱ガニから焼肉+ウニまで
旅のお供、駅弁は出張や旅行の際には必ず買って、車内での楽しみにする……そんなファンは数多くいる。日本全国津々浦々、地元の名産を使い趣向を凝らしたものから、長年に渡って愛されるロングセラーなものまで、数多くの駅弁が存在する。そして、数多くの駅弁ファンがいるのだ。
そんな駅弁界で今、ちょっとした高級志向の駅弁が人気になっていると言う。金沢駅で売られている加賀野立て弁当(※要予約:1万円)や16万円もする日光埋蔵金弁当(※要予約)なんてものもあるが、いわゆる“高級”とされる駅弁は1500円超のものを指すとされる。駅弁の主流は1000円前後なので、やはり1500円超えの駅弁はなかなかの存在だ。だが、そんな高級駅弁が飛ぶように売れているという。駅弁SPA!編集部一の駅弁通である駅弁記者に、人気の高級駅弁について聞いた。
「九州の駅弁は新作駅弁のコンテストである『九州駅弁グランプリ』を毎年開催しているだけあって、レベルが高い。とくに佐賀牛を使った、武雄温泉の駅弁はたいへん素晴らしい出来。冷めた肉でも、脂がしっかり溶けて、肉の甘みを感じられる。京王駅弁大会では毎年バージョンアップさせたものを出品しており、’18年の『佐賀牛霜降りと赤身のステーキ』(1998円)も期待できそう。九州の駅弁は東京には滅多にやってこない(※東京駅などで買えない)ので“レア感”が駅弁好きの琴線を捉えています」
「毎年1月1日から2月末までしか製作されない『幻の駅弁』と呼ばれています。炙ったのどぐろの香ばしい香り。そしてレア食材の香箱蟹のほぐし身がぎっしり。カニ味噌もついているので、酒のアテとして楽しむも良し。つけあわせの玉子焼きにも抜かりがない。北陸新幹線の開通で東京駅にも入荷しているので、東京駅で買えるのも嬉しいですね」
「今年初めて食べた逸品。私の地元、浜松の駅弁ですが、地元ゆえ見逃していたのが恥ずかしい。赤ワインとうなぎ?と大いに戸惑うマリアージュだが、どっこい。すっきり系のタレにワインで加えた酸味とコクが香ばしく焼いたうなぎにマッチ。肉厚で、冷えても柔らかいうなぎは浜松の老舗駅弁調整元の矜持か。山椒をたっぷりふって食べたい。付け合せのわさび漬けが濃いタレの箸休めに絶好。午前中に買えば、温かいものにありつける可能性も大!」
そんな高級駅弁界に今秋から新たに参入した駅弁がある。食べログで全国1位に輝く焼き肉界の雄、SATOブリアン監修のウニのせ焼き肉弁当だ。先述したとおり、駅弁は1000円前後のものが主流なので、1880円は高い部類というか駅弁界の中でも一番高いくらいだ。だが、監修はSATOブリアンで、作って販売しているのは駅弁界の老舗、青森八戸の吉田屋という焼き肉界と駅弁界の雄がタッグを組んだ……という一品だ。実際に駅弁記者と食べてみた。
中身の構成は焼き肉にウニが乗ったものと、ニンニクバター風味のカルビが乗ったものがメシの上に乗る。付け合わせはキュウリの漬け物、キムチ、卵焼きという構成だ。オーソドックスな焼き肉弁当の構成だが、肉の上に鎮座する大ぶりのウニとバター醤油の香りが異彩を放っている。
「肉の味がしっかりとまとまっていますね。これ、脂が浮いてないからちゃんと“仕事”していますよ。それにしても焼き肉とウニって、一見するとかなり無茶な組み合わせだけどしっかりまとまっていて、旨い。と、いうか、このウニ、ミョウバン臭さがないんですよ。安いウニを使うとどうしてもミョウバン臭さくなりますから……。それがないのはすごい」
数多くの駅弁を食べ続けた駅弁記者もニンマリ。箱の外に書いてある原材料を見ながらさらに唸る。
「このウニ、ほのかにバターの香りがすると思ったんですよ。そしたら『味付け蒸しうに塩バター』って書いてあって合点がいきましたね。いやぁ〜これは手が込んでますよ。あと、このニンニクバター醤油風味のカルビ。こんなにしっかりニンニクバター醤油風味のする駅弁はそうそうないです。ガッツリとした食べ応えをこの風味が支えていますね」
記者も一緒に食べたのだが、このニンニクバター醤油の香りはまさにSATOブリアンの名物、ブリめしの香りを彷彿とさせるものだった。そして肉質のよさ。駅弁の肉はどうしても硬いというイメージがあったのだが、柔らかいことに驚いた。
「付け合わせのキュウリやキムチに手を抜いていないんですよ。こういうところにまで気をきかせているのは、さすがの一言ですね。お茶と一緒に食べてますけど、お肉をつまみながらビールを飲みたくなる駅弁です。肉をつまみに一杯飲んで、味のしみたメシと共に〆ることもできます」
駅弁記者によると魚介系の駅弁と違って肉の駅弁当は難しいと言われているという。その理由は肉が冷えると硬くなり脂が浮いてしまうからという。駅弁に海鮮系の弁当が多いのはそうした理由もあるからなんだとか。そんな難しい肉系弁当に挑んだSATOブリアンオーナー、佐藤明弘氏に開発秘話を伺った。
「佐賀牛三昧ステーキ&すきやき弁当」(佐賀県/武雄温泉駅/1998円)
「のどぐろと香箱かに弁当」(石川県/金沢駅/1700円)
「赤ワイン仕込みうなぎ弁当」(静岡県/浜松駅/2430円)
焼き肉系が難しいとされる駅弁だが……
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日刊SPA!編集。SPA!本誌では谷繁元信氏が中日ドラゴンズ監督時代に連載した『俺の職場に天才はいらない』、サッカー小野伸二氏の連載『小野伸二40歳「好きなことで生きてきた~信念のつくり方~』、大谷翔平選手初の書籍となった『大谷翔平二刀流 その軌跡と挑戦』など数多くのスポーツ選手の取材や記事を担当。他にもグルメ、公営競技の記事を取材、担当している
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