「ギスギスしていたけど勝っていた」落合博満監督が築いたドラゴンズ黄金期の裏側を番記者が語った
我が道をゆく姿は「オレ流」と呼ばれ、時には「変人」扱いされることもあった落合博満氏の素顔とはどんなものだったのだろうか。そんな落合博満という一人の野球人にスポットを当て話題になっている『嫌われた監督』著者、鈴木忠平氏にSPA!はロングインタビューを敢行した。
前編では、落合氏とのやり取りから垣間見えた意外な素顔を中心に語ってもらった。後編では当時のチームの内情からGM落合博満、そして次期中日ドラゴンズ監督として招聘されている立浪和義氏についても話を聞いた。
【前編を読む】⇒落合博満は「奇策はたった一試合だけ」なのに、なぜ策士と呼ばれるのか。その素顔を8年間密着取材した記者が語る
一見するとベテランへの冷遇とも取れる交代も、適材適所を突き詰めた采配だったわけですね。
鈴木「個人を大切にするというか。川崎さんやマサさん(※山本昌)もそうで、マサさんが200勝に王手をかけてた時に、たまたま落合さんとタクシーで横浜スタジアムで向かっていたんです。その時に『お前、マサの200勝は1面なんだろうな』と訊かれまして。
でもそれって自分はデスクでもないし、わかりませんと答えたら、『個人の積み重ねの記録を1面にしないとメディアはだめだ。そうでなきゃお前らにしゃべんないよ』と。それ僕に言われてもなぁって(笑)。
和田さんの章で書いたのですが、和田さんに『チームバッティングするな』って言ったんですよ。利己の究極的な追求が最終的に集団の利益になるってことを落合さんは考えていたのかもしれませんね」
鈴木さんから見て、当時のドラゴンズはどんなチームだったんでしょうか。
鈴木「落合さんのことを好きだとか、嫌いだとか、そういうことで繫がっているチームではなかったですね。
星野さんで強かったときにはファミリー的な強さだったと思うんですけど、落合さんの頃のチーム内はギスギスしてたけど勝っていた。それが不思議なところです」
人気はあるけど仲の悪いお笑いコンビみたいな……。まるでビジネスパートナーみたいな関係ですね。
鈴木「こういう強さもあるんだなぁって思ってましたね。中日は球団として地方球団でファミリー的なのが基本だったのですが、落合さんは『こういう強さもある』っていうことを持ち込んだんです」
日本的じゃない……みたいな感覚でしょうか。
鈴木「そうですね。仕事として確信的にやっていたようにも感じます。オフシーズンに番記者と接するときは野球と関係ない話、映画の話を饒舌にされることもある。
決して無口なわけではない。確信的に口を閉ざしていたし、仕事のためにああしてたのかなと。だから(タイロンウッズのホームランで)泣いちゃうときもあったと思う」
「チームバッティングはするな」がチームのためになる
勝っているのにギスギスしたチーム
日刊SPA!編集。SPA!本誌では谷繁元信氏が中日ドラゴンズ監督時代に連載した『俺の職場に天才はいらない』、サッカー小野伸二氏の連載『小野伸二40歳「好きなことで生きてきた~信念のつくり方~』、大谷翔平選手初の書籍となった『大谷翔平二刀流 その軌跡と挑戦』など数多くのスポーツ選手の取材や記事を担当。他にもグルメ、公営競技の記事を取材、担当している
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