先人賢者たちに学ぶ[モンスター嫉妬男]にならない方法
哲学や文学は嫉妬をどう語ってきたか
オセローも陥った”妄想”に要注意
先人賢者たちの智慧を借りれば、厄介なこの嫉妬という感情の処方箋を見いだせるのでは? 哲学や文学など思想史関係の作家や著作を紹介するウェブサイト『哲学の劇場』を主宰する山本貴光氏と吉川浩満氏に話を聞いた。
「嫉妬についてはフランシスコ・ベーコンが的確に言っています。『比較するから嫉妬が起こる』と。裏返せば、嫉妬しないためには比較するなということです」(山本)
「アリストテレスもまた、『幸福な人を見て自分の胸が痛み、自分と同等な人だと嫉妬が起こる』と言っています。ただ、比較可能かどうかに客観的な根拠は必要ありません。例えば、押尾学さんの”押尾語録”に『カートが生きていたら、俺を嫉妬しただろうか』という名言があるんですよ(実際の発言かどうかは不明)。カートというのは、今は亡き伝説的バンド、ニルヴァーナのカート・コバーンのこと。普通なら恐れ多くてそうそう比較できる存在ではないのですが(笑)。想像上で比較が可能ならば嫉妬も可能になる」(吉川)
人類最初の殺人、アベルを殺めたカインだって原因は嫉妬。旧約聖書に描かれるくらいで、「嫉妬は人にインストールされているもの」(吉川氏)。それでは、その取り扱いは、どうすればいいのか?
「スタンダールが『恋愛論』の中で、嫉妬との付き合い方として、『よく確認しろ』と指南していますね。わからないから妄想で嫉妬心が肥大する。シェイクスピアの『オセロー』は誤解から嫉妬が芽生え殺人に至る話ですが、オセローだって確認さえしていれば殺さ
ずにすんだはずですから」(山本)
そう、オレより上司に可愛がられている妬ましいアイツも、実は、並々ならぬ、努力を重ねているのかもしれないわけで。「嫉妬の燃料となる”妄想”に気をつけろっていう。常に現実と照らし合わせてみる。大事なのはKnow Yourself(汝自身を知れ)」(吉川)なのだ。
「アリストテレスは、嫉妬をギリシャ語で『ゼーロス』と『プノトス』に分類しています。日本語で言えば『向上心(ゼーロス)』と『妬み(プノトス)』とを分けて考えるわけです。ゼーロスがなくなってしまったら、個人も社会も向上しません。少々の嫉妬はあったほうがいいんですよ」(山本)
~嫉妬とは~
誰にでもインストールされているもの
『哲学の劇場』主宰
【吉川浩満氏】
’72年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、国書刊行会、ヤフーを経てフリーに。
【山本貴光氏】
’72年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、コーエーでのゲーム制作を経て、物書き、ゲーム・デザイン講師に。共著に『問題がモンダイなのだ』など。
’97年からウェブサイト『哲学の劇場』を開設。哲学から科学、芸術分野の作品、人物評、エッセイを提供している。http://www.logico-philosophicus.net/
取材・文/塩原 晃 昌谷大介 田山奈津子 古澤誠一郎(オフィス・チタン) 港乃ヨーコ 鈴木靖子(本誌)
取材/吉田峰子
― [モンスター嫉妬男]職場で大暴れ白書【7】 ―
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