人はなぜゴキブリに恐怖するのか? 精神科医の見解
―[[ゴキブリvs人類]最終決戦]―
夏の夜。喉の渇きを潤すため台所の電気をつけると、何やら異物の存在に……ギェエエーッ、Gだ。Gが現れた! 人類の敵・ゴキブリ。恐怖の最新生態と合わせて、今年の夏こそ我が家から根絶するための対策を伝授する。
ゴキブリに恐怖する心はなぜ生まれるのか?
「コミュニティよりも家が優先され、パーソナルスペースとしての密室感が増すにつれて、家を自分自身と同一化する傾向が現代人にはあります。家とは自己の延長線上であり、清潔かつ無害であるべきものという意識が強い。その自意識と密接に結び付いた平穏な日常を、土台から揺さぶるのがゴキブリとの遭遇というわけです。ゴキブリが苦手な人でも、自宅以外の飲食店などで遭遇すると意外と平気なのは、そうした精神的背景があるからです」
つまり、深夜の自宅など、極めてパーソナルな状況で出会う闖入者がゴキブリであるため、恐怖と憎悪を抱くのだ。家を自己と同一視することで闖入者に恐怖する傾向は、高齢者が「天井裏に誰かいる」と幻覚を抱く“幻の同居人”の症状などにも見られるという。
「そこに、一匹見つけたらもはや手遅れという絶望感、『どうしてこんなろくでもない生き物が存在しているのだ?』という根源的かつ無意味な問いによる無力感、閉鎖空間による不快感などが加わり、恐怖をより濃密なものとする。克服するためには催眠療法などが考えられますが、まあ、そこまでする必要はないでしょう(笑)」
代わりに、春日氏は「ゴキブリはコミュニケーションを円滑にするツール」と捉えるべきだと語る。
「これほどまでにゴキブリへの恐怖が一般化した現代においては、“ゴキブリ憎し”はある種の共通言語、共通体験であるわけです。つまり、『ゴキブリが怖い』という感覚こそが当たり前であり、同じ感性を持つもの同士ということでコミュニケーションが円滑になる。逆に、ゴキブリが平気な人のほうが変人扱いされて、生きづらいと思いますよ」
ゴキブリこそ、人間関係の潤滑油。悲鳴を上げたら「自分は普通の人間だな」と胸を撫でおろし、存分に恐怖体験を語ればいいのだ。〈取材・文/週刊SPA!取材班〉
【春日武彦氏】
精神科医。都立墨東病院精神科部長などを経て、成仁病院院長。著書に『なぜあの人は平気であなたを傷つけるのか?』(宝島社)など多数
※週刊SPA!6月5日号「[ゴキブリvs人類]最終決戦」より
―[[ゴキブリvs人類]最終決戦]―
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