友達に「悪い宗教じゃないの?」と言われて…旧統一教会・韓日夫婦の間に生まれた子どもたち
約30年ほど前に韓国で合同結婚式を挙げ、その後は韓国に嫁いだきり“行方不明になっている”と言われていた日本人女性信者の現在を追うため、日本人女性信者が多く集まるという韓国の北東部にある洪川(ホンチョン)の教会を訪ねた。
そこには確かに数多くの日本人女性たちがおり、そのうちの一人、角谷祐子さんに話をうかがい、壮絶な過去から現在に至るまでの軌跡を辿った。今回は、そんな角谷さん夫婦の子どもたちのインタビューをお届けする。
旧統一教会をはじめとした宗教の大きな問題の1つとして語られるのが、2世問題だ。親の信仰と社会の間に板挟みとなり、社会に適応できなくなることも多いという。
角谷さん家庭にも、長男、次男、長女、という順に3人の子どもがおり、みな成人を迎え、大学で勉強をしたり、一般企業に就職したりとそれぞれの道を歩んでいる。次男は、2012年に教会内で結婚。同じく日本人と韓国人の両親の間に生まれた女性信者と祝福を受けた。
韓国人と日本人の親を持つ子どもだということ、そして新興宗教2世としての2重のアイデンティティーに苦しむことはなかったのか。率直な疑問をぶつけてみた。
当日、話を聞かせてくれたのは長男と次男、そして次男の妻だ。次男の妻を含め、全員が韓日家庭で生まれ育ったこともあり、普段は韓国語で、必要があれば日本語も話す。兄弟2人は韓国語で何か冗談を言い合っては、その様子を次男の妻が口に手を当てて笑いながら見守っている。何を話しているかはわからないが、仲の良い様子は伝わってきた。
極めて健やかに育ったように見える3人だが、旧統一教会を信仰する家庭に生まれたことで、生きづらさを感じることはなかったのだろうか。
「幼い頃は時代的に旧統一教会が知られていなかったこともあり、話しても分かってもらえないことが多かった」という長男。現在は、キリスト教以外の宗教や“異端”とされる宗教でも良いものがたくさんあると知り、隠すことが少なくなったという。
一方、次男はどうだったのか。
「小さい頃は友達も『親から聞いた旧統一教会』しか知らなくて、僕たちに対して『それ、悪い宗教じゃないの?』という反応ばかりでした。実際の生活とは異なる、聞いた噂だけで話をされるので、言いにくかったですね。成人になってからは信仰をカミングアウトしても、僕の人となりを見て判断してくれる人が増えたので、人を選びながら話すようにしています」
同じ境遇の兄弟でもやはりケースバイケースのようだ。
幼いときに社会から「よくわからないもの」や「悪の宗教」などといったレッテルを貼られていることを知れば、信仰自体が嫌になってしまいそうなものである。「教会に通うのが嫌になってしまいそうですね」と水を向けると、次男は前のめりになってこう話した。
「むしろ行きたかったです。教会に行けば、同じ境遇の友達がいたので。教会にいる間のほうが楽しかった」
社会からの偏見を受けて、かえって教会が心の拠り所になっていったという次男。とはいえ、彼らは「韓日家庭」という、その他多くの韓国人信者とは大きく異なる点を持つ。それぞれ違う国籍を持つ両親の間に産まれた2世は、他の2世とはまた違った苦悩があるのではなかろうか。
そのことについて尋ねてみると、次男は真面目な顔で頷いてから、こう話した。
「統一教会は隠そうと思えば隠せたんですけど、小学校のときに親の名前を書くことがあったのですが、韓国の名前って全部3文字なんですよ。でも、お母さんの名前は7文字だから、日本人だということがすぐにバレてしまうんですね。そうすると『独島(竹島)はどこの国のものなのか』とか、『サッカーだとどちらを応援するのか』とか、そういう話になる。あとは『家ではいつも寿司が出るのか』とかね(笑)。幼い頃はそういったことが心の傷になった時期もありました」
こちらを気遣ってか、もともとの性格なのか、次男はほんの少しおどけながら話した。
「独島(竹島)はどこの国のものか?」韓日家庭に生まれて…
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