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友達に「悪い宗教じゃないの?」と言われて…旧統一教会・韓日夫婦の間に生まれた子どもたち

「旧統一教会はウソで変な宗教なのかもしれない」それでも信仰を続ける理由

 親の信仰とアイデンティティーの問題。世間から注がれる怪訝な視線に、二重の悩みを抱えた韓日家庭の2世。適合できずに精神のバランスを崩したり、親から距離を置く人も多いそうだ。角谷さんの子どもたち自身も幼くデリケートな心に傷がついたのは間違いない。
家庭連合

角谷さん夫婦が結婚した当時(1991年3月)

 そのまま屈折してもおかしくないような状況下で、彼らはなぜ健やかに育てたのか。その理由について、次男は「母の頑張りと両親の仲の良さにある」と話す。 「どこに行っても特別扱いされる僕たちを心配して、日本人学校に行くことになったときも、韓国人学校に通うことになったときも、お友達のお母さんたちと努めて仲良くしてくれました。それから、(理想の家庭を築くという教義からすると)夫婦関係がうまくいっていない場合も信仰への疑念は出てきてしまいますよね。でも、僕らのお父さんとお母さんはとっても仲が良かった。だから、たとえ外で嫌な思いをしても、家庭の中で何とか幸せを感じることができたんです」  そう言って、親譲りの愛嬌のある笑みを浮かべた。  同じような境遇にあっても、同じように感じるかは個々人によるところが大きい。しかし、角谷さんの子どもたちは親の背中を見ながら今も信仰を続け、長男は教会が運営する大学で学び、次男は一般企業に就職して働いている。  そして、次男に関しては、2012年に同じ教会内の女性(現妻)と祝福を受け、結婚をしている。祝福を受けた理由については「学生のときに、(教会内の)友達が祝福を受けると言っていて、負けたくなかった(笑)」と冗談まじりに話していたが、本人の意志によっては教会を離れて、信仰のない人と結婚する人もいるそうだ。  教会内で祝福を受けるということは、信仰を続けることを自ら決断するようなものだ。幼少期より信仰にまつわる色々な辛い経験をしてきたにも関わらず、信仰を続けようと思ったのはなぜなのか。  次男は少し考え込むような素振りを見せた後、「正解は今すぐ出せない」と言いつつ、まっすぐとこちらを見据えた。 「今も信仰はありますし、この先も信仰するつもりですが、何が正しいのかなんて誰もわからないですよね。もしかしたら僕が信仰している旧統一教会の教えだってウソで変な宗教なのかもしれない。ただ、教会の中で教えている『人のために生きて(男女間において)1人だけを愛して、自分を犠牲にすることがあっても人のために生きてください』という考えを信じることは損にはならないと思ったんです」  その言葉は力強かった。ただ教義をそのまま受け入れるわけではなく、自分なりに考え、そのうえで良い部分を選択しようとしているのかもしれない。とはいえ、「まぁこれからも悩み続けていきます」と言いながら、照れを隠すように笑った。 家庭連合 自ら入信をした角谷さんや夫のような1世とは異なり、2世にとっては“与えられた信仰”。自分で選んだ信仰ではないため、適応できずに、屈折した人生を送ることになる人も少なからずいるだろう。  また、韓日家庭で生まれ育てば、特有のアイデンティティーのゆらぎに苛まれる人もおり、「信者」や「2世」といった主語を大きく括ることは「日本人」や「男性」を語ることと同じか、それ以上に難しい。  「これからも悩みながら信仰を続ける」と言った、今回の2世の答えもまた、数多いる信者の考え方のたった1つに過ぎないのである。<取材・文・撮影/日刊SPA!取材班>
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