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『インクレディブル・ファミリー』監督が語る。米国でヒーロー映画があふれるようになったワケ

求めた要素は“スパイもの”にあった

――前作に続き、60年代風のサウンドやミッドセンチュリーの世界観が印象的でした。ヒーローというより、スパイムービー風のテイストですが、どうしてこうした世界観になったのでしょうか。 監督:私がやりたかったのはヒーローものだ。でも子供のころ、すごくワクワクしたアドベンチャー作品というのは、スーパーヒーローものではなくスパイものだった。たとえば、子供の頃にテレビシリーズの「スーパーマン」が再放送されていたけれど、空を飛んでいてもワイヤーは見えるし、もうちょっとジムに行ったほうがいいよと思うような体つきだった。「バットマン」は、今の映画のような雰囲気ではなく、ちょっとおちゃらけた感じのバットマンだった。 だから、イカれたヴィランとか、クールなガジェット、かっこいいファイトシーン、危険なにおいをまとった女性キャラといったものを見たかったら、スパイものに求めることになったんだ。
インクレディブル・ファミリー場面写真2

本作のグラフィックは、ミッドセンチュリー当時のイラストやアニメーションのトーンを意識している

――今でも人気のシリーズなどがありますね。 監督:まずはやっぱり、ジェームズ・ボンドの『007』シリーズだよね。テレビシリーズだと、「シークレット・エージェントマン」とか、「0011ナポレオン・ソロ」とかね。あとは、もちろん「スパイ大作戦」。そういった作品に、当時の私がスパイヒーローものに求めていた要素を感じていた。 つまり、自分にとっての最高のヒーローものというのは、ああいう作品だったんだ。そこから影響を受けているから、僕らの作ったヒーローものは、ほかにはないユニークなテイストになっているのだと思う。 ――『Mr.インクレディブル』の後、実際に『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』で監督を務められました。 監督:トム・クルーズが『Mr.インクレディブル』を観て、声をかけてくれたんだよ。アクションの演出が素晴らしかったと。アメリカでは今でもアニメ映画の監督は、実写の監督に劣るといった偏見が残っている。でも、トム・クルーズは、実写だろうがアニメだろうが、演出は演出だと評価してくれたんだ。 そして『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』で組んだスタントコーディネーターが、今作ではヘレンのスクリーンスレイヴァーとの戦いを振り付けてくれた。絵コンテのスタッフとアニメーターたちと一緒に、ヘレンの動きを作り上げてくれたんだ。だから、とても説得力の伴った動きになっているよ。  夏のファミリー向け映画の大本命といえる『インクレディブル・ファミリー』だが、スーパーヒーローでありつつ、パパでもあるボブの心情にもっとも共鳴して楽しめるのは、実は中年男性かも。また、悪役“スクリーンスレイヴァー”の主張の深さにも、唸らされるはずだ。
ブラッド・バード監督2

ちなみに、本作に登場するカリスマ・デザイナーのエドナ・モードは、監督自身が声を演じている

<取材・文・写真/望月ふみ、劇中画像/(C) 2018 Disney / Pixar. All Rights Reserved.>
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
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