五輪ボランティアが「搾取」でしかないこれだけの理由
そもそも都市ボランティアでも募集条件は劣悪だ。大会ボランティアともなればさらに上を行き、「1日8時間勤務を10日以上、そのうち5連勤もあり」という勤労サラリーマンそのもの。そして、これらすべてがタダ働きなのだから、異議が出るのも当然だろう。仮にボランティアを11万人、日当を1万円とすると、一日11億円。五輪開催期間17日を乗じると、少なくとも187億円が浮く計算になる。
「しかも五輪中は酷暑が予想され、11万人以上もボランティアがいれば、熱中症で亡くなる人が出る可能性も。そのとき有償の雇用関係を結んでいない以上、運営側は死んだ人の自己責任を主張して逃げ切りを図ると思います」(本間氏)
前述のように五輪運営側は学生の動員に注力しているが、時間に自由が利くことでは、シニア世代は学生に負けていない。彼らはこの劣悪な労働環境を、どう見ているのだろうか。
’04年の設立以来、NPO団体「TOKYO FREE GUIDE」(以下、TFG)では、都内近郊で外国人旅行者向けに無償の観光ボランティアガイド活動を展開中だ。ここでは高い語学力を持つ精鋭たちが、年間で81か国8272人(’17年実績)の外国人を案内している。平均年齢52歳、定年退職者から現役まで質量ともにハイスペックなこの団体ならば、さぞかし五輪ボランティアに燃えているはず……。
だが、TFG副理事長・桐生隆久氏によれば、五輪はまったくのノーマークらしい。
「我々の普段のガイドは、ゲストが選んだ観光ルートに終日密着したもの。だが、都市ボランティアの活動内容とは異なりそうです。また、数年前から今もゲストの要望の30%程度しか応えられないほど多くのガイド依頼が来ており、てんてこ舞いの状態で、五輪を待つまでもない。大会ボランティアに興味を持っているメンバーはいるようですが、10日間の縛りは厳しいという声をよく聞きます。それになにより、この暑さ。TFGのサイトにも、『今年の東京は異常に暑いのでガイド内容を変更するかもしれない』と英文の警告を出したほどです」
五輪ボランティアの労働条件は、スキルを持つシニア層のやる気を引き出せないようだ。その一方、シニアの大多数を占めるノンスキル層については、組織委員会は密かに排除の方針だと本間氏は言う。
「高齢者は熱中症での死亡リスクが高まりますからから、’64年の東京五輪のように10月にやらせてくださいと、五輪招致責任者の森喜朗、安倍晋三らがIOCの前で土下座して詫びを入れるしかないでしょうね」
これぞ“大政治家”の仕事だろう。
※『週刊SPA!』9月4日発売号「五輪摩擦 ボランティアがヤバすぎる」より
取材・文/野中ツトム・岡田光雄・福田晃広・沼澤典史(清談社)
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