韓国アパレル業界で活躍する日本人女性。感覚や文化の違いはトラブルから学んでいく
ちょうど同じ時期、ダニョンさんは韓国で働きながら語学を学んでいた。マーケティング会社やサユさんと同じくOEMの会社で仕事をしていたという。
サユさんは、ワーキングホリデービザが終了するまでの残りの期間を、韓国で働きながらOEMのノウハウを学び、会社を設立するための準備をはじめた。
そして、東大門の近くに、日本円でおよそ7万円の4畳ほどのレンタルオフィスを借り、友人とOEM会社『アイエルケイアール』を設立。その友人が退職したタイミングでダニョンさんを誘い、OEM業にプラスして、独自のブランド『105tenfive (テンファイブ)』もスタートさせた。
会社設立にあたり、投資ビザの準備もはじめたが、日本でマイナンバー交付の時期と重なったこともあり、通常では国際銀行振込で済む話も、現金を直接韓国に持ち込み、さらには証明書の発行をする必要があるなど難航したという。
サユさんは投資ビザが降りるまでの間、日本と韓国を行ったり来たりしながらの生活を続けていたが、日本人にしかわからないデザインへのこだわりや、緻密な縫製方法などが人気を博し、口コミで仕事が舞い込むようになっていった。
仕事が多忙になるにつれ、4畳のスペースが手狭になってきた頃、韓国人の卸業者の社長に「私の会社のスペースを一部貸すので、一緒に仕事をやらないか?」と声をかけられた。どうやら、日本人を対象に商品を売る手伝いをしてもらい、その代わりにスペースを貸すといった条件だった。ふたりはこの条件をすぐさま飲み込んで事務所を引っ越したが、このあと想像もできない事態に直面することになる。
事務所を移転して数か月後が経った頃だ。
「今すぐ、ここを出なくてはならない……」
ダニョンさんのところにサユさんから連絡が入った。理由は、韓国側が思う商品の完成基準と、日本側が求める商品の基準が合わなかったことが原因だ。
韓国人の社長から事務所を出て行ってほしいと通告された。彼の言い分は「日本人の細かいこだわり、度重なる修正とクレームが割に合わない」ということだった。
こういった感覚や認識の違いは今でも起こるという。たとえば、日本では「いったん考えます」などの“遠回しに断っている”フレーズは、韓国では通用しない。それでは断ったことにはならないのだ。
後日、「考えてくれましたか?」と当然のごとく連絡が入る。なかには、返事をもらえるまで毎日のように食べ物や品物を持って交渉にくる業者もいたとか。韓国では、このような挨拶まわりが多いのも特徴だ。仕事に関して、人脈や情を重要視している文化が感じとれる。
日本人と韓国人の“商品基準のズレ”が問題に
渋谷系ギャル雑誌編集部を経て、フリーランスとして主に雑誌・ WEB の編集や執筆、広告のクリエイティブディレクターとして活躍。日韓クォーター・韓国語留学経験を活かした執筆も手掛ける。Instagram:@happycandybox
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