R-30

「私が死んだら辞められますか?」と電話が…退職代行のリアルな現場

 ブラック企業をやめたくても、やめられない――そんな人々に希望を照らす一筋の光に、退職代行という制度がある。聞き慣れない言葉かもしれないが、知見を備えた弁護士が勤務先と労働者の間に入り、電話1本でカタをつけてくれる頼もしい仕組みだ。

 そんな退職代行の第一人者として活躍するのが、弁護士の嵩原(たけはら)安三郎さん。情報バラエティ番組「ミヤネ屋」にも出演する敏腕弁護士だ。労働問題の水際という“現代社会の歪み”に真っ向から挑む嵩原さんのもとには、月に数百件もの相談が来るという。

 どんな人々が何に悩み、どうやって解決するのか――“退職代行請負人”による短期集中連載をお届けする。

* * *

「相談の連絡がもっとも増えるのは、連休最終日の夕方。時間でいうと『ちびまるこちゃん』が終わったぐらいですね。翌日から始まる辛い日常を想像して『会社、行きたくないな……』と思うのでしょう。今年のゴールデンウィークは10連休ということもあり、新社会人を含め、相談件数も増えると思っています」

 嵩原さんが退職代行を本格的に請け負うようになったのは2018年12月ごろ。始めたばかりのころは、これほどの反響は予想していなかったという。

「依頼者は中小企業のサラリーマンから、中間管理職、取締役、風俗嬢までさまざまです。年齢も20代の新卒から60代の嘱託社員まで幅広い。勤務期間も最短は3日、長い人は20年以上と、あらゆる人から退職代行についての相談を受けています」

 嵩原さんが属するフォーゲル綜合法律事務所では、LINEや電話で相談内容をヒアリングし、情報を整理した上で依頼者に代わり、企業に退職の意図を伝えてくれる。勤務先との交渉は、任せっきりでいい。そもそも弁護士に相談するまで悩み抜いてきた人に、タフな交渉ができるはずもない。法律のプロが間に入ってくれること。これこそ退職代行を依頼する最大のメリットだろう。

「電話を受けた会社側も、最初は感情的になることが多い。喧嘩腰に怒鳴ってくる人もいます。また、パワハラや労災の訴訟を起こされるのではないか? 警戒する経営者も多いですね。でも、僕たちが目指すのは、円満退職。訴訟を起こすことが目的ではありません。

 そもそも、依頼者は退職について自分から言い出せないほど追い詰められている。中には『私が死んだら会社を辞められますか』とまで言ってくる人もいます。もしこれが後手後手になると、彼らが心を病んでしまい、企業にとっては労災になってしまう。その場合、労働者はもちろん、雇用側にも大きな痛手となる。それを未然に防ぐために、弁護士が代理人となっているのです。それをきちんと説明するのが僕の役割なんです」

次のページ 
「会社からの電話に出る必要はない」

1
2
3





おすすめ記事