更新日:2023年03月20日 10:44
仕事

「私が死んだら辞められますか?」と電話が…退職代行のリアルな現場

横行する非弁業者のトラブル

東京風景 世の中に労働問題で心をすり減らす人はよほど多いのだろう。現在、退職代行サービスは注目されており、扱う業者も急増している。ところが、そのなかで見逃せない問題も起きている。  実は、弁護士以外が報酬を目的に会社と条件面などの交渉をすることは弁護士法72条違反の「非弁行為」に当たり、禁止されている。にも関わらず、退職代行を請け負う業者が多いのだ。 「弁護士以外の代行業者ができることは、『辞めたい』という意思を代わりに伝言するだけ。退職届けを代理で提出することはできません。また退職後のトラブルや訴訟、有給、未払いの残業代について交渉ができるのも弁護士資格がないといけない。  非弁の業者に依頼した結果、トラブルに発展する事例も後を立ちません。法律に詳しくないのだから、そもそも相手側に弁護士がでてきたらこてんぱんにやられるでしょうね。退職代行を依頼するときにここを間違えると、エライ目に遭います。  たとえば、先日、ある退職代行業者に依頼した方から相談がありました。依頼して手続きを任せていたら、会社から『損害賠償請求する!』と言われたというんです。驚いた依頼者が頼んでいた退職代行業者に相談したら、あっけらかんと『顧問弁護士に聞いてみたら、このケースでは損害賠償請求受けても仕方がないとのことでした』と回答があった。事前にきちんと対策していれば、避けられる事態なのに……法律の表面的な規定は知っていても、法律トラブルの実態を知らないから、こんなことになる。辞める意思を依頼者に代わって伝えるだけでなく、辞めたあとまで依頼者を守る、これが退職代行の役割なんです」
嵩原弁護士

労働者と勤務先の間に入り、円滑に退職への道をナビゲートしてくれる嵩原安三郎弁護士。まさに百戦錬磨、この道のプロフェッショナルだ

 熱弁する嵩原さんが、最後にこう結ぶ。 「世の中には理不尽な職場やブラックな企業もたくさんある。もし今、あなたが限界を感じたなら、適切な場所に助けを求めていい。心をすり減らし、命を捧げてまで会社に勤める必要はありませんから」  立つ鳥跡を濁さず。万一に備えて、円満退職をサポートしてくれる弁護士による退職代行を心に留めておいて損はないだろう。次回からは、個別具体的なケーススタディをもとに、今この国で起きている労働環境の闇を照らしていきたい。 【フォーゲル綜合法律事務所】 嵩原安三郎氏 ’70年沖縄県生まれ。京都大学卒業後、’99年に弁護士登録。情報商材や副業詐欺など悪徳商法案件を数多く手がけるスペシャリスト 取材・文/アケミン 構成/浜田盛太郎 
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