【藤沢数希氏】インターネットが産業構造を破壊する!
◆マネーな人々 今週の銭格言
【選者】人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏
’12年1月19日、米コダック社は、67億ドル(約5000億円)の負債を抱え、日本の民事再生法に相当する「連邦破産法第11条」の適用を申請した。同社の破産から見えてくる、「イノベーション(新機軸)」がもたらすものとは?
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◆ネットは破壊的イノベーションの宝庫
少し前までは皆の賞賛を集めていた任天堂は、今ではiPhoneなどで提供される無料や安価なゲームとの競争で先が見えなくなっている。エルピーダメモリなど高品質が売りの日本の半導体メーカーは、台湾や韓国の低品質だが安価なチップとの競争で苦境に立っている。ソニーやシャープのテレビ事業も、やはりアジア勢の安価な液晶にやられている。
しかし、現在進行している強烈な破壊的イノベーションはなんといってもインターネットの世界である。そして、その背後にあるのが「ムーアの法則」だ。コンピュータは毎年恐ろしいスピードで性能アップし、安くなっているのだ。こうしてインターネットで提供される無料か、極めて安価で便利なサービスが既存の産業構造を破壊し続けている。アマゾンでみな本を買うようになり、町の書店が次々と姿を消した。無料で提供されるツイッターなどのSNSで人々が余暇を過ごすようになり、ほかの娯楽にお金が流れない。通話品質はよくないが、LINEなどの無料のインターネット電話が既存の電話会社の収益を削っていく。
しかし、本当にヤバいのは出版社だろう。ブログなど無料の情報がネット上に溢れかえるようになり、雑誌が売れなくなった。そして、ネットのなかで広告宣伝費をかっさらっていくのはテレビ局ではなくグーグルである。外資系金融機関ではリストラの嵐が吹き荒れるなか、僕は週刊SPA!がいつまでちゃんと原稿料を払ってくれるのか大変心配している。君は、生き延びることができるか?
【今週の数字】
ムーアの法則
18か月で2倍
半導体の集積度は18か月で2倍になる――インテルの創業者、ゴードン・ムーアが1965年に提唱したムーアの法則は、日々進化するコンピュータの世界でいまだに生き続けている
【藤沢数希氏】
欧米の研究機関にて計算科学、理論物理学の分野で博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。主宰するブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは6万人に及ぶ。最新刊『「反原発」の不都合な真実』(新潮新書)が発売中
物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある
『「反原発」の不都合な真実』 『反原発』を冷静に論ずる |
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