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ゴーン氏4度目の逮捕は“口封じ”か?「人質司法」と批判される理由

検察がとった「保釈後の再逮捕」という異例の措置

 だが目下、不正支出疑惑以上に注目を浴びているのは、検察がとった「保釈後の再逮捕」という異例の措置。ゴーン氏の代理人を務める弘中惇一郎弁護士は緊急会見を開いて、「一種の口封じで、弁護権の侵害だ」と、検察を批判したのだ。元特捜検事の郷原信郎弁護士も次のように話す。 「常軌を逸した無法捜査と言わざるをえません。まず、逮捕する必要性がない。自宅に監視カメラが設置されるなど制限が課せられ、証拠隠滅のおそれはありませんので在宅起訴で十分です。身柄拘束を強行したのは、裁判に向けた準備を阻止するための嫌がらせと圧力としか考えられない。  そもそも特別背任を立証できるかどうかも極めて怪しい。ゴーン氏は資金の支出について広範な裁量権を有しており、その支出が特別背任罪に該当するかどうかの判断は、会社にとって有用性があるか否か、また対価が相当だったか否かによる。  三越の元社長が愛人の会社に多額のお金を支払っていたとして特別背任罪に問われた三越事件では、その支払いに相当性があったとして’93年の高裁判決で一部無罪判決が言い渡されました。立証のハードルが非常に高い罪状なのです。  今回、検察は代理店に流れたお金がゴーン氏側に還流していたことをもって不正支出を主張するようですが、特別背任罪に問われるのは、あくまで『日産からのオマーン代理店への支払い』の部分。私腹を肥やす仕組みができあがっていたと立証できる証拠があれば別ですが、『代理店からゴーン氏側に資金が還流していた』という事実だけで特別背任罪に問うことはできないのです」  人質司法とも批判される理由がここにある。

司法取引に応じたはずの日産本体も起訴された謎

 さらに大きな問題もある。 「有価証券報告書の虚偽記載について、ゴーン氏と併せて、司法取引に応じたはずの日産本体も起訴されている点が不可解です。ゴーン氏の起訴に協力して、検察と一緒に証拠固めを行った日産が、同じ裁判体で裁かれるからです。  当然、日産は起訴事実を全面的に認めるでしょう。そこで認められた事実が、否認を続けるゴーン氏の裁判に影響を及ぼす可能性が非常に高い。日産に有罪判決を出した裁判体が、同じ事件で起訴された被告に対して無罪判決を下すのは極めて困難なのです。すでにシナリオができている不公正な裁判となりかねません」(郷原氏)
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フランスもゴーン・バッシング一色
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