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上司がそろっていなくなる? 突然はしごを外される組織――「外資系はつらいよ」

外資系企業で頻発する「民族大移動」

 彼が老舗メーカーをやめ、前職のIT企業に戻って1ヵ月ほど経ったある日のこと。アジア太平洋地域を任されている本部長から電話がかかってきました。おそらく察しのいい方はこの時点で想像がつくでしょうが、彼もまた会社をやめるとのこと。 「お前はこれまで本当によくやってきてくれた。おかげで日本の数字も上向いてきたし、俺が担当しているアジア太平洋地域全体の数字も良くなっている。ありがとう。そんな中、非常に残念な話をしなくてはならないのだが、俺は今日付けで会社をやめることになった」 「え、やめるって、まさか副社長と同じく前職に戻るんですか?」 「あぁ、そうだ。またボスが呼んでくれることになったので、ここをやめて、ボスの元に戻ることにした。思ったよりも早く戻れて嬉しいよ」  そう言うと、本部長もあっさり会社をやめてしまったのです。外資系企業、特にアメリカ企業のマーケティング部門のトップの任期は、平均して2年未満だと言われています。それだけ移り変わりが激しいのですが、その分、早く結果を出さなくてはならないため、転職の際に前職の部下を引き連れていく、いわば民族大移動のような状況がしばしば起こります。思えば副社長も同様で、老舗メーカーに転職してきた時も、そして再びIT企業に出戻った時も、頼れる部下として常に本部長を一緒に転職させてきたのです。  結局その後、その老舗メーカーでは副社長も本部長も社長のお気に入りの保守的な人間に戻ってしまい、マーケティングの方針がガラリと変わってしまいました。上司が一気に変わり、方針も激変したことで、筆者も「合わないな」と感じ、その後すぐ別な会社へと転職することになりました。  このように、トップの転職で部門全体があっという間にひっくり返るのが外資系企業の特徴です。  筆者もこの体験を機に、社内における上司の立場や転職の可能性といった情報にアンテナを張り巡らせるようになりました。そうやって常に準備をしておかないと、自分がとばっちりを食らうことになる。それが生き馬の目を抜く外資系でのサバイバル術なのです。
カラオケボックスの店員からIT業界に転身し、外資系企業を渡り歩いてはや四半世紀のアラフィフビジネスマン。特技は新しい転職先と安くて美味い呑み屋を見つけること。最近、薄毛と痛風の発作に悩まされている
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