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ラブホテル主任から芸人まで…引きこもりから脱出した男たち

 結局、その友人とはタイミングが合わず組めなかったが、念願のお笑い養成所に入所。何度かのコンビ結成と解散を経て、ピンとしても活動し、2014年の「R-1ぐらんぷり」では決勝進出を果たした。翌年、現在の事務所に所属。バイトを続けながら、数多くのライブやコンテストに参加するなど精力的な活動を続けている。先日、出身地の岩手で行ったライブには家族も来場し、声を掛けてくれたという。
ミヤシタ様横

「芸人になった達成感のようなものは特になかったですが、ストレスや閉塞感からの解放なのか、アトピーや喘息の発作などは全くなくなりました」

 引きこもりの状況から抜け出したいと思っている当事者や、周囲の人間へのアドバイスを求めたところ、悩みながらも以下のように答えてくれた。 「ひきこもりになる理由も、なる人の性格や素養も本当にそれぞれなので、こうすれば解決するとか、一概に言えないですよね……。ただ、もし今、自分が当事者だったらとりあえず必死にネットで脱出の仕方を探すと思います。もし自分の周りに当事者がいたとしても、無理に引っ張り出したり、追い詰めたりはしないほうがいいと思います。とりあえず当事者の話を聞いて、必要な情報を集めてあげたり、できる限り環境を整えてあげたりする程度がいいかもしれません」  最後に川崎殺傷事件について思うところも聞いてみた。 「環境も性格も全然違いますから、自分があの後ずっと引きこもっていたとしても、ああはなっていないとは思いますが、完全に(ならなかったと)否定もできませんよね。ただ、自分としては今回の事件で『死にたきゃ一人で死ねよ』という論調が巻き起こったことの方が気になります。  恐らく犯人も『どうせ、一人で死んでくれよと思うんだろう?』と考えてた人物だと思う。どうせ、そういう世の中なんだろと思ってたからこそ、引きこもってたし、こういう事件を起こしてやろうと思ったのかもしれない。犯人に同情するわけではないですが、個人的には世間のそういう冷たさが気になりました」  狂気の犯行にまで追い詰めた無言の圧力が、今回の事件でその姿をまざまざと現したのは、皮肉という言葉では片づけられない。
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適応障害からラブホテルの主任に
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