更新日:2023年04月18日 11:05
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夏休みの宿題、コツコツ型と追い込み型、学力が上がりやすいのは?

宿題は親の要望で?保護者LINEで解答を回すケースも

 そんな夏休みの宿題だが、教師たちは口を揃えて「あんまり出したくないんだけれどね」と語る。では、なぜ宿題が課されるのかといえば、保護者からの要望だという。 「帰ってもすることがなくてうろうろするので宿題を出してください」 「夏休みにすることがないのは困ります。宿題はたくさん出してください」 そういった声が学校に届けられるのだそうだ。  ベネッセコーポレーションが2009年に調査した「小学生の夏休みの実態、夏休みに関する保護者の意識(2009年)」では、「夏休みの宿題は子どもに必要だ」と感じている保護者が96.8%を占めている。  保護者の要望で出されている夏休みの宿題だが、それをこなすため、家庭での負担にもなっている。子どもたちが宿題に取り組むように見守ったり、採点をしたりするのも保護者の役割だからだ。特に小学校段階では、子どもがつまずいている箇所を教えるという場面も多い。最近は宿題の中に難問があると、クラスの保護者同士のLINEグループに賢い子の解答の写真が回ることもあるそうだ。

自由研究は課題設定力や探求心を育むもの

 以前、エンジニアの方を取材したとき、「小学校の自由研究の頃からすでに開発をしていた」と語っていた。現在はライターとなった私も、自由研究では小説を書いて提出していた。要するに、自由研究は子どもの関心を伸ばす機会と見ることができる。  しかし、現在は自由研究に保護者が関わりすぎている場合も少なくないという。  ご存じかもしれないが、自由研究は成績には入らない。学校で教える内容を定めている学習指導要領に「自由研究」の規定はないので、評価のしようがないのだ。ではなぜ、自由研究という課題を設けるかと言えば、課題設定力や課題解決力、探究心などを育むためなのだ。  「工作キットで何かを作ることが大切なのではなく、何に関心を持って、どんな工夫をしたのかが、大切です」と先生方は言う。成績に入らないのならば、いっそのこと子どもたちの関心の赴くままに進めさせるのがよいのかもしれない。  もちろん、保護者が関わるのが悪いわけではないという。 「家庭の中で、一緒に学びを深めていくよい機会にもなります。毎日1つ新聞記事を切り抜いて、その記事について自分の考えと親の考えをディスカッションし、内容をまとめたという面白い自由研究もありました」  夏休みの宿題や自由研究の進め方は、子どもから大人への成長に予想以上に繋がっているといえそうだ。<取材・文/佐藤智> 佐藤智 教育ライター。株式会社レゾンクリエイト執行役員。両親ともに、教師という家庭に育つ。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。中学校・高校の教員免許を取得。中央経済社、ベネッセコーポレーションの教育情報誌『VIEW21』の編集を経て、独立。 株式会社レゾンクリエイトを設立。著書に、『公立中高一貫校選び 後悔しないための20のチェックポイント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『先生のための小学校プログラミング教育がよくわかる本』(共著、翔泳社)がある。
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