ヤマザキショップ、自由すぎるコンビニの謎。GWに9連休、店内でDJイベントや結婚式も…
自由なスタイルは商売の幅も広げる。東京都中央区のYショップ上総屋は、もともとは3代続く酒屋だが、別名「レコードコンビニ」と名づけられている。
店主の趣味で中古レコードを店内に飾っていたことから販売を始め、現在店の売り上げの3割を占める。GWには9連休してロンドンへ買い付けに行くなど、専門店顔負けの品揃えを実現。定期開催している店内でのDJイベントは150人も集客し、商品の売り上げにも繫がっている。
店主の進藤康隆さんは「コンビニ業界ってあまりいいイメージがないと思いますし、僕自身もそう思っていました。だけどヤマザキショップなら制約もほぼなくて、何でもできることを知ってほしい」と魅力を訴える。
ヤマザキショップに詳しいおがわしゅう氏は、そんな個性豊かなところに魅了された。
「同じ屋号なのに店舗によって陳列や品揃え、外観すらも違う。個人商店のアットホームさとコンビニの便利さが両立していて、こんなにも店のカラーが出るチェーン店はないです」
さらに、ヤマザキショップは地域密着の店づくりも強みにしている。福島県大熊町で今年6月、原発事故による避難解除後の初の商業施設としてオープンした店がヤマザキショップだ。営業時間は平日8~18時で日曜定休。役場の人を中心に重宝されている。
「条件が緩やかなので大手コンビニが進出しづらいところに出店できるのです」(渡辺氏)
しかしながら、自由さの裏側で厳しさもある。おがわ氏は「大手コンビニと比べると、ヤマザキショップに入る客はあまりいない」と惜しみながら語る。前出の店主2人も、近所の大手コンビニのほうが客入りはいいのを目の当たりにしている。その理由を渡辺氏は次のように分析する。
「商品力と仕入れ力で大手と大きな差があります。ヤマザキのパンはとてもおいしいですが他店でも買えるし、プライベートブランドも弱いです」
また、後継者不足などで閉店が相次ぎ、’06年には3975店あった店舗数は、’18年には2852店となり、徐々に減少している。だが、ヤマザキショップがコンビニ経営者にとって今後新しい選択肢になりうるという。
「ヤマザキショップはガツガツ働くんじゃなくて、ゆっくり商売をやるにはいいですよね。本部からの縛りがあまりないので自分らしく生きられる小売りのやり方です。これからの時代に合うスタイルといえます」(渡辺氏)
マイナーな存在のヤマザキショップだが、意外にも次世代のコンビニの姿を秘めていた。
●立ち食いそばを併設 Yショップニシ(長野県大町市)
現店主の父親の提案により立ち食いそばを開始。店の外には「そば・うどん」ののれんがかかり、アニメ作品にも登場
●DJイベントを開催 Yショップ上総屋(東京都中央区)
レコードが飾られた店内で角打ちをするうちに客と交流が生まれ、DJイベントをすることに。現在は定期開催している
●自動車部品を販売 Yショップ埼玉自動車大学校(埼玉県北足立郡)
自動車を整備する学校の校内にあり、学生が欲しい部品をすぐ買えるように取り揃える。オイル、塗料、カーナビまである
●看板犬を飼育 Yショップ白馬ジャジャ店(長野県北安曇郡)
店内に入ると看板犬の2 匹のゴールデンレトリバーがお出迎え。スキー場が近く、外国人観光客を中心に可愛がられている
●中古車を紹介 Yショップ市川酒店(神奈川県伊勢原市)
近所の車販売店に頼まれ、店前に中古車が置いてある。店で販売はしていないが、店主曰く客寄せパンダ的な効果ありとか
●自衛隊グッズを販売 Yショップスマイル北吸係留所店(京都府舞鶴市)
自衛官向けの日用品と護衛艦見学者向けのグッズを販売。帽子などここでしか買えない商品も。一般人は平日利用不可
【渡辺広明氏】
流通アナリスト。コンビニ業界で22年働き、約700商品を開発。「FNN Live News α」「ホンマでっか!? TV」(共にフジテレビ)などに多数出演
【おがわしゅう氏】
ヤマザキショップファン。普段は新潟県の市役所職員。休日はヤマザキショップを求めて日本中を旅し、ブログ「ヤマザキショップの世界」でその記録を綴る
<取材・文・撮影/辰井裕紀 ツマミ具依>
※週刊SPA!9/24発売号より
コンビニ業界で自分らしく生きる選択肢
<個性的な全国のヤマザキショップ>
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