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台風19号で夫婦喧嘩…災害は離婚の危機になりうるのか?

災害は離婚の危機になりうるのか?

地割れ ここまで台風19号にまつわる3つのエピソードを紹介した。実際、多くの夫婦が考え方の違いから大なり小なりの喧嘩をしたことだろう。そこで、数多くの離婚してしまった男性を取材し、結婚と離婚の本質に迫った『ぼくたちの離婚』(角川新書)の著者である稲田豊史氏に、果たして災害は離婚の危機になりうるのか見解を聞いた。 「東日本大震災の際、危機管理意識が急速に高まった妻が、意識の低い夫に幻滅して離婚に至った――というケースを聞いたことがあります。夫のほうは『妻が放射脳化してしまった。以前の妻とは思えなくて怖い』と言っていました。  一般的に、女性は男性より環境変化に対する適応能力が高い。つまり、環境にフィットするよう自分自身を信条ごと変えられます。たとえば、個人主義的で進歩的だった妻が、子どもができて生活環境ががらっと変わった途端、堅実で保守的になり、夫の仕事にも安定を求めてくる。結果、夫は『妻が変わってしまった。結婚した時はこんな人じゃなかった……』と戸惑う。“放射脳化した妻への恐怖”もその延長上にあります」  稲田氏は「男性は女性に比べて“自分を変えようとしない”傾向が強い」と話す。それゆえに、環境の変化が大きい災害時には夫婦喧嘩が起きてしまうことも……。 「夫は子どもができても独身時代と同じ頻度で趣味や友人との交友を続けようとします。なるべくならライフスタイルを変えたくない。そののんきな態度が、妻にしてみれば我慢できません。  劇的な環境変化の最たる例である台風などの災害も同じ。妻は自分を平時モードから緊急時モードに素早く変化させ、最悪のケースを考えてあれこれ心配し、行動する。一方、夫は平時モードから変わろうとしない。なかには、“ジタバタするのはみっともない”と考える男性すらいる。当然、夫婦間に波風が立ちます。  夫婦が「妊娠・出産・育児」や災害といった劇的な環境変化にさらされると、夫は『妻が以前と違う人間になってしまった』と嘆き、妻は『夫がいつまでたっても変わってくれない』と苛立つ。そうして、最悪の場合は離婚に至るわけです」

離婚を回避する手段もある

夫婦喧嘩 稲田氏からは離婚という言葉も出た……。とはいえ、離婚を回避する手段もあるという。 「これも一般論ですが、夫は『自分が妻の役に立っている、妻に感謝されている』という、手触りのある実感に自尊心を満足させがち。ですから環境が劇的に変化したら、妻は夫に『こうしてくれたらとても助かる。ああしてくれたらとてもありがたい』と、取ってほしい行動を3歳児にでもわかるような言葉で、具体的に指示するのです。『意識が低い!』と抽象的に糾弾されたところで、夫は行動の取りようがない。むしろ自分が人間性ごとバカにされたと感じ、妻に対して不快感をあらわにしてしまいます。  今回のケースで、夫が『雨の中、コンビニにカップ麺を買いに行った』『妻が食べたがっていた肉まんを買った』『妻のためにカルボうどんを作った』のは、仲直り手段として正しかったと思います。その理由は、妻のご機嫌を取れたから……だけでなく、夫自身が自分の自尊心(僕は、たしかに妻の役に立っている!)を満足させられたから。男の人生の究極目的は、いくつになっても“褒められること”ですからね(笑)」<取材・文/松本果歩(夫婦喧嘩エピソード)、藤井厚年(稲田豊史)>
インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X(旧Twitter):@KA_HO_MA
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ぼくたちの離婚
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