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ジブリの名作「風の谷のナウシカ」が歌舞伎化!その魅力と見どころとは?

新作歌舞伎「ワンピース」のヒットは必然だった?

早稲田大学演劇博物館の副館長を務める児玉竜一教授

 そもそも、既存の歌舞伎ファンはこういった漫画原作の新作歌舞伎についてどう思っているのだろうか? 「多くの歌舞伎ファンは好意的に受け止めていると思います。もちろん、演者たちがきちんと古典歌舞伎にも力を入れているならば、という前提込みですが。そもそも歌舞伎において、2次元から3次元に起こすということは、江戸時代からやっていること。読本や合巻(どちらも江戸時代に流行した挿絵の豊富な読み物)から作品を取り上げ、『絵』から場面を構成するのは、歌舞伎が得意とするところ。2.5次元的な作り方は江戸時代からやっていることなんです」  2015年に「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」のヒットにも「根拠」があるそうだ。 「原作者の尾田栄一郎先生がもともと浪花節系の任侠ものが好きで、その要素を作品に取り込んでいる。船員が寄せ集まって、一家となる流れなどもそうです。漫画以前の文化の影響が物語に取り込まれているので、歌舞伎との親和性が高かったんです。当初はまさに大冒険と思える挑戦でしたが、蓋を開けてみれば、歌舞伎にふさわしい題材だった」  こうした漫画原作の新作歌舞伎が新規客の取り込みに成功しているが、課題も多い。 「新規の観客がワンピースに感動したとしても、そのまま古典歌舞伎のファンになるかというと、今の所は難しい。新作歌舞伎で来てくれた新規層を、どう古典歌舞伎の観客に繋げるか。そこは歌舞伎界全体が考えていかないといけない。やっぱり、『歌舞伎役者』というのは、『古典』を演じるための修業を積んで、その技術を会得した人たちのことですから」  チケット販売開始の直後に、ほとんどのチケットが完売となり、すでに興行的には大成功を収めている歌舞伎版「ナウシカ」。さまざまなハードルを越えて、「歌舞伎」を新たなステージへ導けるのか。歌舞伎界の大いなる挑戦に目が離せない。<取材・文/篠崎友>
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