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「悪夢」は悪いものではない。臨床心理士が語る意外な事実

夢占いはウソ?

――悪夢について調べると、夢占いのサイトがよく出てきます。「死ぬ夢は再生、やり直しを意味する」「成功する夢は逆夢で、現実では失敗に気をつけるべき」「勢いのある火は、周りを幸福にする」などの情報は本当でしょうか。 松田:夢をあらゆる人に共通する意味を持つと判断することは正しくないですね。夢を見た人が、出てきたものや現象に対してどのような意味づけをしているかによってその夢の意味は変わってきます。「死ぬ=やり直し」のような決め付けはできないはずです。  例えばPTSD(心的外傷後ストレス障害)の方が、自分が現実で遭った事故で死ぬ夢を見たとして、それが「やり直し」を意味するとは思えません。他の方で、「やり直し」がしっくりくる人もいると思います。つまり、全員が同じ意味づけで当てはまるはずがないんですね。  出てきたものや現象で夢を分類することはできません。それをどう捉えているか、自分の解釈が現れるだけです。泳いでいる夢を見たとして、水泳が得意な人にはチャンスを意味するかもしれませんし、苦手な人にはピンチを意味するかもしれません。

悪夢との上手な付き合い方

――悪夢を見てしまった時、どう対処すればいいのでしょうか。 松田:悪夢は自分が何に問題意識があって、何に不安を抱いているかを客観的に気がつかせてくれます。悪夢をうまく利用してください。  そしてそれらの夢は、必ずしも自分のこととは限りません。管理職の人になると、自分がマネジメントしている人への心配が夢になって出てくることもあります。部下が不安定だったり、心配するような夢を見たら、部下をもっと気にかけたいと思っていることを示しているかもしれません。  でも、中には悪夢を見ても「なんでこんな夢を見たのかわからない」と思う人もいるでしょう。そういう人は自分が何を問題に感じているのか、気がつくためのヒントにして欲しいんです。  そうしたときに活用できるのが日記です。夢を見た後、スケジュール帳などにどんな夢を見たか書いてください。すると、何日か後に現実の中でその原因が見えてくることがあります。「来週のプレゼンテーションがプレッシャーだったんだな」とか、「昨日見た映画の影響だな」とか。  問題が自分の中で解決できれば、もうその悪夢は見なくなります。現実での解決よりは、自分の心の中で解決することと関係していて、自分が納得ができればそのテーマは終わりです。慣れてくると、自分の調子をセルフモニタリングすることができるようになります。  とにかく、悪夢を見たら自分が生活をより良くしようと前向きに取り組んでいると考えていいと思います。自分がこの世界で奮闘しているという努力の表れです。逆に頑張らなくていい、責任のない世界に行けば悪夢なんてすぐ減りますよ。頑張っている自分を褒めてあげてください。 ====  必ずしも悪い意味を持つわけではない悪夢。しかし、悪夢が苦しくて毎日途中で飛び起きてしまう人は例外だという。その場合は、心理士や精神科医に一度診てもらった方がいいそうだ。  悪夢を見ても、スルーしてしまったり、夢占いのサイトを鵜呑みにしてしまう人が多いだろう。しかし、その内容に向き合うことが、自分が無意識のうちに悩んでいたことに気がつくきっかけになるかもしれない。 <文・取材 ミノワリク> 【松田英子】 臨床心理士として活躍し、江戸川大学教授、放送大学大学院客員教授などを歴任。2015年、東洋大学社会学部社会心理学科着任。2000年より集英社imidasの心理学項目を執筆している。著書に『夢と睡眠の心理学―認知行動療法からのアプローチ』(風間書房)など
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夢と睡眠の心理学―認知行動療法からのアプローチ

夢や睡眠について心理学の立場からの知見をわかりやすく解説。悪夢や不眠症状に対する認知行動カウンセリングによる支援法を中心にまとめたカウンセラーにも役立つ書

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