仕事

退職代行vsブラック企業「うちには有給なんてない!」と言い張る経営者

「辞めたら家族を脅す!」サイコパス経営者との壮絶退職劇

 次に嵩原氏が「これもよくあること」として挙げるのが、退職の意思を告げると実家や自宅に押しかける、という例。にわかには信じがたいが、ここで関西在住の岸谷千尋さん(30代、仮名)の壮絶な退職エピソードを紹介しよう。 「地元のクリーニングチェーンに勤めていたのですが、社長が公私混同のパワハラ気質でした。就業中に機嫌が悪いと難癖をつけて平手打ちをされ、『お前なんて人間じゃないから一回、死んでこい』という罵声はもはや挨拶がわり。休日には社長の買い物に運転手代わりに付き合わされることが多々あり……これが7年間続きました」  そんな岸谷さんの退職の決定打となったのは昨年末の忘年会での出来事だ。 「裸芸を強要されたんです。油性ペンで全身に落書きをされた挙句、動画を撮って『お前が辞めたらYouTubeにアップするぞ』とも脅されていました」 「このままじゃおかしくなる」  意を決して岸谷さんが退職の意思を告げると、今度は両親と暮らす自宅が標的となった。 「逃げたら追い詰めるぞ」 「とことんいくからな」 「こっちはどうなってもいいんだぞ」  と脅迫まがいの電話がかかってくるようになったのだ。 「挙句の果てには『自宅に押しかけるぞ』とも言われて。本当に怖かったです。とてもじゃないけど自分では対処できない、と思った」  精神的にも疲弊しきった岸谷さんは、藁をもすがる思いで退職代行サービスに相談することになった。このようなケースについて、嵩原氏はこう言う。 「『会社を辞めたら、大変な目に遭うぞ』などと言って脅すのは、脅迫罪など別の罪に問われる可能性も高い。直接的な加害行為を明示しなくても危険な目に遭わせることをうかがわせる言葉は脅迫罪に当たり得ます。  たとえば、普段から暴力的な社長が『おまえの実家は●●だったな』と具体的な住所を挙げる行為は、暗に『今から実家に訪問し、危害を加える』ことをうかがわせます。同様に、『おまえのお母さんは一人暮らしだったな』と言う言葉も同じで、脅迫行為になり得ます。  実際に激昂した経営者が自宅に押しかけてきた場合はすぐに警察を呼んで、家のドアを開けずに私たちの事務所へ連絡してもらっています。警察が到着するのを待って、私たちが警察官に直接、事情を説明したことも一度や二度ではありません。中には夜中に家に上がり込む経営者もいました。警察が到着しても『自分は正しい』と大演説をする経営者もいました。ただ、最終的には帰り、その後は訪問しません。その『第一インパクト』を乗り切ることが重要です」  もはや会社を辞めるのも命がけ。サイコパスな経営者に真正面から向き合うのは、精神的にも時間的にも消耗してしまう。だが、この世の中にはそんな“手に負えない”経営がのさばっているのも事実なのだ。 【フォーゲル綜合法律事務所】 嵩原安三郎氏。’70年沖縄県生まれ。京都大学卒業後、’99年に弁護士登録。情報商材や副業詐欺など悪徳商法案件を数多く手がけるスペシャリスト 取材・文/アケミン
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