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「即日退職」は本当にできるか? 退職代行、相談する前に知りたい5つのこと

 パワハラ、セクハラ、長時間労働…辞めたいと言っても強引に引き止められる。場合によっては自宅にまで押しかけてくる。そんな劣悪な労働環境に悩む人にとって、一筋の光を照らす退職代行。単に辞めたいという意思を本人に代わって会社に伝えるだけではなく、賃金や残業代の未払い、有給休暇まで様々な交渉ごとも請け負ってくれる。
退職代行

※写真はイメージです

 とはいえここ数年で急拡大したサービスとだけあって、世の疑問や不安は尽きることがないのも事実。今回は、退職代行にまつわる様々な疑問を労働問題に精通し、フォーゲル綜合法律事務所で実際に退職代行の実務にあたる嵩原安三郎弁護士が回答する。

●「即日退職」は本当にできるのか?

Q1 「退職代行について調べると『即日退職』というフレーズを目にしました。本当にその日に退職できるんですか?」 A1 民法第627条では、退職の意思を告げてから2週間すれば退職できるという規定があります。この場合、会社や雇用主の「承諾」は必要ないので従業員から一方的に会社に「退職します」と伝えればいいことになります。  とはいえこれは規約であって「一方的に従業員側から会社に連絡すれば、即日退職できる」ことを認める<法律>ではありません。即日退職するには、会社と「交渉」し、会社と「合意」することが必要なのです。そしてその交渉は弁護士しかできません。それを弁護士でない非弁業者がするのは違法。  例えるなら、医者でない人が勝手に手術をしてはいけないことと同じです。つまり、弁護士でない「非弁業者」が会社と交渉して、即日退職をさせることは法律上できないので、くれぐれも注意が必要です。  すると「会社と交渉している間は出勤しないといけないのか?」という疑問が出てくるでしょう。結論から言うと出社する必要は、ほぼありません。  有給休暇がある場合は会社が即日退職を認めない場合でも、退職を申し出た日から有給休暇の取得を申請し、出社しないことになります。  依頼者のなかには「うちの会社は自営業だから有給休暇はないです」という方も少なくありませんが、有給休暇はどのような業種でも、認められています。  もし有給休暇が足りない場合については、欠勤扱いにしてもらうという手段もあります。そもそも退職代行を依頼する人はすでに体調不良に陥っていたり、パワハラに悩んでいることがほとんどです。  つまり有給がないから、という理由で無理やり出勤をして、状況を悪化させることだけは避けなければなりません。そのため「体調不良」や「パワハラ被害拡大の防止」という理由で欠勤することがほとんどです。  実際に私たちが依頼を受けたケースでは、依頼者が即日退職を希望した場合、まずは会社とその点を交渉しています。交渉開始時から依頼者の方が欠勤しても、私たちが代理人として会社と連絡が取れるようになっているので、特に問題はありません。  怖いのは、弁護士に依頼せず自分で会社に一方的に退職届を送りつけたり、非弁代行業者に任せっきりのまま欠勤し、会社からの連絡を無視するケース。  この場合は無断欠勤と扱われてもやむを得ませんし、会社は引き継ぎのための質問ができないために、損害を受けてしまうことも。そして最悪の場合、会社から巨額の損害賠償請求を受けたり、懲戒解雇となったりしてしまっても文句は言えないので注意が必要です。

●引き継ぎトラブルで損害賠償も……

Q2 「即日退職で引き継ぎのトラブルは起こらないですか?」「のちのち損害賠償請求をされてしまうのではないでしょうか?」 A2 ただ単に会社を辞めるだけでは会社に損害賠償する必要はありません。会社が「勝手に退職したのだから、損害賠償を請求する!」といっても、裁判所が会社の言い分を認めることはまずありません。  しかし、担当業務の引き継ぎを全く行わず、それによって会社が取引先とトラブルになって損害が発生したような場合には別です。このような場合、「退職したから」ではなく、「引き継ぎを行わず、会社に損害を与えたから」という理由で、会社から損害賠償請求を受ける可能性があります。  まずは引継書をつくっておき、「会社から質問があれば質問を受ける」という態勢を作っておいてください。ご自身で直接質問を受けつけることができないなら、会社との窓口として弁護士を用意しておくことも必要です。
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