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元国税職員が教える「税金面で最も不利な投資」 最大税率55%の恐怖…

仮想通貨の取引には「優遇措置」がない

 株式が有利な理由は、税率面だけではありません。「損失を繰り越せる」「NISAなどの非課税制度がある」という2点も見逃せないポイントです。  株の売買で損をした場合、その損失を確定申告すれば、翌年以後最長3年間繰り越すことができます。そして、3年以内に生じた株の売却益などと合算することが可能です。たとえば令和元年に100万円の売却損が出て、令和2年に300万円の売却益が出たのであれば、これらを合算して200万円の利益を基準に税金が計算されます。  NISAなどの非課税制度も、投資家にとっては大きなメリットとなります。こちらは、一定金額以内の投資元本に対して、そこから生じた利益をすべて非課税とするものです。確定申告をする必要もなく、証券会社で手続きをすれば利用することができます。  一方、仮想通貨取引の場合、基本的に、損失を繰り越すことはできず、非課税制度も存在しません。否応無しに総合課税所得として、所得税・住民税合わせて最高約55%もの税金を払わないといけないということです。  このように比較すると、株式投資に比べ、仮想通貨投資は税額が高くなりがちということがお分かりいただけるのではないでしょうか。しかも、株式投資の場合、特定口座で「源泉徴収あり」を選択すれば、収入に対して自動的に税額が差し引かれるため、申告漏れのリスクを抑えることができます。仮想通貨投資については、源泉徴収のしくみがないため、自ら確定申告をしなければ、申告漏れとなってしまいます。  申告漏れを国税当局が把握すると、税務調査が行われ、加算税や延滞税が課される可能性もあります。こういった点を合わせて考えると、現状の制度では投資をするなら仮想通貨よりも株式のほうが有利と言えます。 「税負担を踏まえても、自分はビットコインのほうが大儲けできる自信がある!」という人は別ですが、税金のことを考慮すると、投資をするのであれば、仮想通貨よりも株式を選んだほうが無難と言えるでしょう。
2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を辞職し、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、お金に関するセミナーを行っている。『僕らを守るお金の教室』(サンマーク出版刊)、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社刊)ほか著書多数。公式ホームページ
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