更新日:2020年01月30日 15:49
エンタメ

<純烈物語>怒涛の年末年始を追跡。2度目の紅白の味は……?<第28回>

1回目の紅白とは違った光景を楽しんだことでバグが……

 純烈の出番は6番目。11ヵ月前は不可能と自分たちでも思った瞬間が、19時35分に訪れた。紅白ならではのスペシャル版として、DA PUMPと共演。 『純烈のハッピーバースデー』の振り付けをメンバーのTOMOとU-YEAHが担当しており、ここでも純烈は自分たちの縁(えにし)を一つの形としてエンターテインメントに昇華させた。ステージでは、DA PUMPのメンバー7人がイエローのジャケットで統一。  それは、1年前にこの場所で酒井、小田井、白川裕二郎、後上翔太とともに歌い、踊っていた友井雄亮のイメージカラーでもあったため「DA PUMPのはからいなのかも」と、ツイッター上が揺さぶられた。もちろん、そのことに関する公式なアナウンスはない。答えは、受け手側それぞれの中にあればいい。 「1回目の紅白のイメージは、ひとことで言い表すと“ざわざわ”。客席もそうだし、スタッフも右往左往していて、そのざわつき感が同じNHKホールでも『うたコン』とはまったく違っていた。そんな中、日本の芸能界、音楽界で中枢にいる人たちが一ヵ所に集まっていて、ここにミサイルが飛んできたらどうなっちゃうんだろうって思っていました。  それほどのすさまじい現場だから、テレビに出ているという感覚が薄かったんですよ。あとは光量ね。あれは長く芸能界でやっているけど紅白が一番すごい。そういうことを思いながらやれたぐらいで、本番も紅白で歌っている実感はありつつ冷静で。みんなちゃんとできているかなとか、カメラのカット割りとか、スローモーションのように全部見えましたね」  それが、酒井にとっての紅白初体験だった。意外なほどに落ち着いており、純烈らしさを視聴者に伝えられているかを読みつつ、前半の出番だからうまく中盤へつなごうという意識もあった。  酒井の中には緊張しない方法というのがある。何もかもをやろうとするとテンパってしまうから、本番前にやるべきことの優先順位を3つ立て、4つ目以後をバッサリ切り捨てるとプレッシャーが消えるらしい。  だから、2度目の今回も紅白だからといって恐れるものは何もなかった。ところが、その光景を楽しんでいたことでフォーメーションにバグが生じる。 「レコード大賞では白川と後上がテンパって、フォーメーションが崩れて。後上が僕の前に来て被って映らないとか問題が生じたので『もう一回落ち着こう』といって今日は臨んだんです。ところが、落ち着こうと言っていた自分が落ち着いていなかった。目の前に広がる3000人のお客さん、すごい数のカメラがいる紅白ならではの風景を味わいすぎちゃって、そこへ居続けたところに小田井さんが来たから交通渋滞状態になった。 『酒井君!』って、デッカい声を出してくれたおかげで我に返って戻れました。純烈って、歌いながらよく喋っているんですよ。いつもは自分が後ろから言っているのに、紅白では小田井さんに言われた。ここじゃない!と思って急いで移動するという。なぜこれだけやってきながら今日に限って……不思議な気持ちになったんですよ。なんで俺たち、紅白に出られているんだろう?って、目の前の歌に集中できない感覚が、全員にあった」  365日、450公演。絶妙の呼吸と間合いでショーを見せてきたのに、目標として掲げてきたそのゴールで思わぬ事態が起きる。それこそがライブの醍醐味でもあるのだが、よりによって紅白のステージとは。  そうしためぐり合わせも含めての純烈なのだろう。何もかもがスムーズに終わっていたら、今年も「落ち着いてできた」印象しか残らなかった。  何より、このステージはパフォーマンスをパーフェクトに遂行するのが一番の目的ではない。3日前の囲み取材で、酒井は「みんなが見ている舞台をお貸しいただき、今年の感謝を一曲にこめたい」と言っていた。  波乱万丈の一年の総決算……そうした思いを誰よりも強く持ってNHKホールの舞台に立ったのは純烈だったと思われる。それにしても、2019年最後の最後で酒井を救ったのが小田井だったという関係性も、味わい深い。 「小田井さんだけが、この2日間はマトモだったということです。その代わり、あとの363日はムチャクチャだけどね。あの人が一番デタラメで立ち位置は守らないわ、ビブラードは逃し放題だわで。でもこの2日間は、あの人が一番の重しになってくれたんですよ。やっぱりグループなんだなあというのがあって、そこが去年の紅白とは違う味わいになったかな――」 撮影/遠藤修哉(本誌)
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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