更新日:2023年05月18日 16:25
スポーツ

センバツ高校野球「謎選考」BEST5。納得できないファンたち

第2位 “品位”の前に涙を飲んだ“山陰の怪童”

1987年秋の中国大会 決勝戦 広島工4-1西条農 準決勝 広島工11-1倉吉東 西条農3-2江の川 準々決勝 広島工(広島2位)4-3松江商(島根2位) 江の川(島根1位)4-3鳥取西(鳥取2位) 倉吉東(鳥取1位)6-3南陽工(山口2位) 西条農(広島1位)3-1宇部商(山口1位)  春の選抜の出場選考にはチームの実力だけでなく、その高校自体の品位も選出基準となる。いくら成績が優秀でも品位にふさわしくない面があれば、選抜にもれることもある。その“品位”の部分で悲劇が起きたと囁かれているのが’87年秋の中国大会でのこの例だ。  この年、中国地区に与えられた枠は4枠。地域性を考えても広島2、鳥取1、島根1と均等なことから、そのまますんなりベスト4の4校選出で異論のないところ。だが、当時の新聞記事による選考予想に気になる1校が。ベスト8敗退組の宇部商が、好投手・木村真樹の存在で当落線上に残っていると予想されているのだ。  もしもここから大逆転選考があるとしたら、落ちるのは準決勝進出も1-11でなすすべなく大敗した倉吉東のハズ。準Vチームに惜敗した江の川は普通に当選するハズ。ただ、倉吉東は伝統的公立進学校で、このときは学校創立80周年、さらに部員わずか16名で奮闘……といかにも高野連好みのチーム。対する当時の江の川は、お世辞にも“品位が良い”とはいえないヤンチャ坊主の集まりだった。それでも当然、不祥事などは起こしてないワケで、まさか“品位に欠けている”なんて理由で落選しないと思っていたが。結果は広島工、西条農、倉吉東 宇部商
谷繁流 キャッチャー思考

谷繁流 キャッチャー思考(日本文芸社)

 と、まさかの落選。しかも選考過程をみると倉吉東は落選どころか、3番手で当選。しかもその理由が「大敗したが、河野投手を軸にキビキビした試合ぶりをみせた」という、アバウトなもの。そして最後の1枠は事前予想通り、投手力が評価されての宇部商だったが、実はこの年の江の川には“山陰の怪童”と呼ばれた強肩強打の超高校級捕手・谷繁元信(元・中日など)がチームの主軸として君臨していた。なのにその谷繁の存在は完全に無視。  ちなみに江の川はこのときの悔し涙をバネに、続く夏の県予選を勝ち抜き、見事に甲子園ではベスト8にまで進出している。その予選5試合すべてで谷繁はホームランを放ったことも付け加えておこう。

第1位 選出Oを阻止した伝説の“センター返し枠”

2002年秋の近畿大会 決勝戦 平安6-3智弁和歌山 準決勝 智弁和歌山9-0東洋大姫路 平安4-3斑鳩 準々決勝 智弁和歌山(和歌山3位)7-4箕島(和歌山2位) 東洋大姫路(兵庫3位)2-1育英(兵庫1位) 斑鳩(奈良1位)5-4南部(和歌山1位) 平安(京都3位)7-5近江(滋賀1位)  このときの近畿勢の出場枠は6枠。状況的に4強+8強敗退組から2校選出と考えるのが普通。だが上記の通り、毎年毎年強いチーム揃いの大阪勢が1校も残ってない。下記がその結果。 2002年秋の近畿大会の大阪勢の結果 1回戦 近大付2-4東洋大姫路 東海大仰星1-3平安 大産大付0-9近江  と、まさかの初戦全滅だったのである。実は大阪府勢が春選抜に出場出来なかったのは’27年の第4回大会のみで、複数出場すら数知れず。だが、この状況でいくら地元とはいえ、1枠ですら確保は不可能なハズ。“大阪枠”の発動なんて、ありえないハズ。つまりは万事休すなハズ。注目の選考結果は……。平安、智弁和歌山、斑鳩、東洋大姫路、近江、近大付左打者イメージ まさかの1枠確保である。しかもそのせいで和歌山県勢が割りを食う形に。なんで近大付なのだ? 気になる選考理由はなんと「中堅返しのできる粘り強い打線を持つ近大付が地域性も考慮された」というもの。ただ、このウルトラCなみの超逆転劇を演じた近大付は’84年の選抜出場校選考の際に超理不尽落選していて、まさにそのときの“貸し”が返された形となる。それでも当時の高校野球ファンからは非難囂々。この近大付の選出を“センター返し枠”と呼んで揶揄されたものだ。  以上、2回に渡って春の選抜における“謎選考”をお届けした。改めて振り返ると結果、当落線上になくても伝統的な公立進学校はやはり強い。21世紀枠導入後でも一般枠で当落線上にある強豪校は……。とにもかくにも今年は過去あまた起きた謎選考・逆転選考が起きないことを願っている。<取材・文/上杉純也>
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