更新日:2020年02月01日 12:33
ライフ

新型肺炎、自衛隊も「要請があれば協力する」。国の対策は大丈夫か?

米国・中国の疾病対策と日本の違い

マスク

※写真はイメージです

 米国にはアメリカ疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)という感染症に対して合衆国市民を守る組織があります。これは感染症などの危険な生物的脅威から国民の健康を守る安全保障機関です。中国の人権侵害はしばしば問題視されますが、そんな中国でも国民を疾病から守る機関を持っています。今回、コロナウィルス禍の最前線でも防護服の医療関係者が対処しています。仮に日本で新型ウィルスが発生したらあの対処はできないでしょう。日本のNIID国立感染症研究所は「研究・研修・国家検定・検査業務」などの機関であり、具体的な疾病対策を実施する実行部隊ではありません。  しかし、ちょっと考えて見てください。「未知の感染症」に対して、最初に対処するのは一般の患者がいる民間病院です。病気がどんなものなのかわからないうちは特別なことが何もできないのは歯がゆいばかりです。とはいえ、香港で武漢出身の患者が空港から人が一人入れるだけの小さなプレハブのような箱に入れられたまま運んでいく様子がネット配信されていましたが、それはそれで問題です。今回のコロナウィルスに感染した患者が一般の病院の診察で見つかる状況は避けられません。

感染症指定制度と今後の動き

 もし、武漢発の新型ウィルスが日本でも流行し始めれば、インフルエンザウィルスなどと同様に患者の入り口を分けるなどの対処が初期段階では行われます。次に、疑わしい患者が出れば随時保健所に知らせて対処を待つようになり、この段階でこのウィルスが感染症法で指定されればそれに従っての対処が始まります。保健所はこのウィルスがどこから始まったのか、トレーサビリティをしっかりして感染を抑え込む情報を集めます。  2月1日の新感染症指定後は、厚生労働省の指定した感染症指定医療機関がその指定された病床を準備して対処にあたります。感染症指定医療機関には感染が広がらないように陰圧室という気圧を低くし、室内の待機が外に逃げ出さないように、外から常に空気が入ってくるように工夫された部屋があります。ちょうど、集中管理室の陽圧室の真逆です。普通の集中管理室は外からの「ばい菌」が入ってこないように室内の気圧を高くして外に向かって空気が流れるようにしてあります。  時々刻々と入ってくるさまざまな情報に接すると不安に駆られますが、焦っても我が国の制度では手続きを踏まなければ何もできないようです。  2009年の麻生内閣は新型インフルエンザに対処するために、感染の疑いのある帰国者・入国者を留め置く「停留」のための医療施設を、成田周辺で約500室を確保しました。法律や制度の枠にがんじがらめになっているのは自衛隊だけではありません。国にどれだけの対処ができるのか、今は冷静に見極めたいと思います。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

1
2
おすすめ記事