気仙沼市「鉄道復旧の議論までたどり着かない」
―[[被災鉄道]復旧への遠い道のり]―
世界に誇る日本の鉄道網も東日本大震災によって壊滅的な打撃を受けた。人や物資を運ぶライフライン=鉄道だが、いまだ復旧さえおぼつかない地域も多数残されている。被災地の鉄道復旧はなぜ遅れているのか。その要因を現地で探った。
一方、市の中心部が壊滅的な被害を受けた気仙沼市では、少々事情が異なる。北へ向かう大船渡線と南へ向かう気仙沼線がいずれも不通になった気仙沼では、街ごと内陸移転の方向だが、具体的な方向性がまだ見えていない点では野蒜地区同様だ。ただ、内陸移転に反対する声は少ないという。
「街が津波にのみ込まれる光景は、二度と見たくないし、絶対に繰り返してはダメです。高台移転が一番いい」と、津波に生家を流された住民は語る。
また、気仙沼市の北端、上鹿折駅近くで理髪店を営む女性は言う。
「ウチのあたりは津波も来なくて、被害がなかったのに鉄道が使えなくなったので確かに不便です。可能なら復旧してほしい。でも、(気仙沼)市内や北にある陸前高田市の被害を考えれば急げとは言えません……」
ならば復旧もスムーズにいくかと思いきや、別の問題も。
「そもそも街が壊滅的な状態なので、その立て直しが優先。どのような街にするのかが決まらないと、鉄道の議論までたどり着かない」(前出の国交省東北運輸局幹部)
こうしたなかで、現在の気仙沼線軌道跡にバス専用道路を敷設するアイデアも浮上している。JRが市側に提案したものだが、交通業界の事情に詳しい関係者は、「定時性を保てるし、小回りも利く。その上、鉄道と比べて非常に安い」と評価する。しかし、こちらにしても街の復興があってこそ。
「鉄道再建ならば大規模な工事になり、地元経済に大きなプラス。廃線前提の後ろ向きの議論は歓迎されないでしょうし、今後も紆余曲折はあるでしょう」(同)
内陸移転や住民との合意、そして街そのものの再建など、鉄路復活に向けての問題は山積している。黒字会社のJR東日本は、鉄道軌道整備法が規定するところの災害復旧事業費の助成対象ではないが、さすがに全額負担も難しく、費用分担の問題も残る。
しかし、鉄道の復旧は人や物資の流れを生み、被災地の経済を活性化し、復興を促すのもまた事実。そのためにも、地域住民を置き去りにすることなく、一早く復旧し、震災復興のシンボルとなってくれることを願わずにはいられない。
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