入学・入園シーズンが到来し、学校や保育園という新しい環境に子どもが馴染めるか不安な家庭も多いだろう。
3月6日に発売された漫画エッセイ『
うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』では著者の吉田可奈さんの息子・ぽんちゃんに発達障害があることが発覚。のちに重度の知的障害と診断された。しかし、障害に理解ある保育園の協力もあり、ぽんちゃんは周囲の大人や子どもにも馴染み、自分のペースでのびのびと成長していく様子が描かれている。
それぞれの子どもの特性に合わせた対応法
前回の記事では
「発達障害の子どもの特性の見極め方」について紹介した。今回は発達障害の子たちが起こしやすい、いくつかの行動について、個別の対応法を紹介する。答えてくれたのは発達障害の専門医である宮尾益知氏(どんぐり発達クリニック・院長)だ。
①落ち着きがない、待つのが苦手
「落ち着きがない子は騒音など刺激が多い環境からなるべく遠ざけましょう。落ち着かせるためには高ぶった神経が鎮まるよう、ぎゅっと抱きしめてあげると有効です。手や足をやさしくもむなどを繰り返すと、過敏な状態がおさまることもあります。また、待つのが苦手な子には“こうすればもっとよいことがある”という動機を与えてあげます。行動の後にご褒美や賞賛があるとその行動は増え、うれしくないことがあれば行動は減っていきます」
②指示・言葉を理解しにくい
「子どもへの指示は“〇時に〇〇(具体的な場所)へ出発しよう”など、シンプルかつ具体的なほうが理解しやすくなります。“これ”や“あそこ”などの代名詞は避け、物の名前や場所、回数を具体的に示しましょう。また、ADHDの子どもには行動前に声をかけるのが効果的。ASDの子どもには行動中に声をかけると効果的です。言葉を理解しにくい子はトイレ・エプロンなどのよく使う物や、“うれしい”や“かなしい”など喜怒哀楽の表情の絵を描いたカードを用意しておくと、やりとりがしやすくなります」
③他人の表情や状況を読み取れない
「積極的に友達と交流させて、人づき合いのスキルを学んでもらいましょう。最初の内は、遊んでいるグループに連れて行って“『入れて』って言おうね”と促すなど、親がサポートしてあげます。また、関わりの中で周囲の人間が“〇〇されるとうれしい”など、自分の気持ちを声に出して説明してあげることも大切です」
④触られることを嫌う
「触覚刺激が鋭いために、触られるとカッとなって乱暴なふるまいをする子もいます。こうした発作が起きた場合は優しく抱きしめたり、やわらかい洋服ブラシなどで手や足をこすったりして、神経をなだめてあげましょう。軽い圧迫感を与えると落ち着きやすいため、手首にサポーターをつけるのも有効です」
⑤刺激に対して鈍感
「この場合、自ら刺激を求めてあちこち動く“多動性”になる子もいます。朝から少し汗をかくような運動をさせるとよいでしょう。散歩、ジャンプ、体操などもおすすめです。運動が苦手な子は、できなくても否定せずにほめ、続けさせることが大切です」
⑥突然叫ぶ、暴れる
「ASDの子はささいな出来事でもトラウマになりやすい傾向があり、その出来事が頭の中にふと浮かんでパニックになることも。慌てずに見守り、やさしく抱きしめてあげましょう」
⑦アニメや自分の世界に入り込んでしまう
「アニメや自分の世界に入り込んでいるなら、まずはその設定に合わせ、その中で少しずつ外の世界に誘導しましょう。その子に合わせたセリフから徐々に“ケーキじゃなく夕食を食べよう”など、現実世界のことを取り入れることで、次第に現実を受け入れるようになります」
このように接し方を工夫することで「すぐには治らなくても、時間をかけて優しく丁寧に対応してあげることで、トラブルは減る」という。焦らず、子どもの成長や個性に合わせた対応策を考えてあげるとよいだろう。
<取材・文/日刊SPA!取材班>