差別と排除を生む [放射能議論]の危険性

 震災発生から2か月半が経過した今も、福島第一原発の事故は終息の気配を見せず、予断を許さない状況が続いている。原発周辺や福島県の人たちにとっては、まだまだ苦しい日々が続きそうだ。  だが、その一方で、付近住民ではない人々の間で、放射線被曝に関する議論が活発化している。  とりわけ、危険性を主張する人の声は大きく、口づての噂やチェーンメールやツイッターで“放射線以上の拡散”を見せている。  そうした言説には、過激で扇情的な主張も多い。 「政府や東京電力の発表がいまひとつ信用できないなか、トンデモ理論が出てくるのも仕方がない面がある。今は誰も経験したことのない状況で、多くの人がとてつもない不安感を抱いている。そういうときは、いくら“科学的に見て大丈夫”と言われても納得できず、不安を裏付けてくれるような説明を信じがちなんです」(疑似科学に詳しい大阪大学教授、菊池誠氏) ◆過激な危険論が生み出す放射線以上の問題点  すでに神話が崩壊した「原発は絶対安全です」や、「プルトニウムは飲んでも平気!」といった推進派の言う「安全デマ」にも驚き呆れるものがあるのは事実だ。しかし、この危険性を主張する人々の言説は、“安全デマ”と違いある種の問題を孕んでいる。 「こうした主張が広まると、放射能差別を生み、詐欺商法の蔓延に繫がる。今は、我々科学者は、どんどん正しい情報を発信していかなければならない。“安全”と言うと、御用学者のレッテルを貼られてしまうので大変ですが、それでもやらなければいけない」(菊池氏)  放射線被害を撒き散らす、安全性が不確かな原発は今後なくすべきかもしれない。  しかし、そのための正しい一歩を踏み出すためには、こうした非科学的で、ともすれば差別と排除の論理に囚われかねない言説に惑わされるのは、反原発の足をも引っ張り兼ねない行為だ。まずは、冷静になって科学的な知識を身につけることが大切ではないだろうか? ― 放射能より[放射能議論]のほうが恐ろしい【4】 ―
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