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自粛させるならカネをだせ! レジャー・エンタメ産業は政府に滅ぼされる

休業補償だけでなく家賃の問題も……

 たしかに、人件費に関しては政府の雇用調整助成金で中小企業の場合は手当てできるが、家賃について公的な給付はない。 「国交省は、不動産保有業者に対して、テナント賃料の支払いに猶予を設けるようにと、ここでもやはり『要請』を出しています。しかしその大家さんも、借入金で不動産を所有していた場合、テナントからの支払いがなければすぐにパンクです。最終的には銀行にまで波及して、ローン支払い猶予をする流れになると思います」  とりわけ深刻なのは、五輪特需を見込んで営業計画を組んでいたホテル・旅館業界だ。 「まず、2月の春節~5月のゴールデンウィーク需要を逃し、肝心の夏の五輪も延期ですからね。需要の繁閑差のある観光・宿泊業にとっては、貴重な稼ぎ時が潰れてしまうので、これからどんどん倒れる業者が出てくると思います」  日本政策金融公庫や自治体の助成金など、中小事業者に向けた無利子・無担保融資をする方針だが、これについても手放しでは喜べない事情があるようだ。 「コロナ被害がいつ終息するのか、いつまで耐えたらいいのか見通しゼロの状況で、お金なんて借りられません。中途半端に借金でしのいでも、結局事業が行き詰まったら、返済義務を負うのは経営者個人、中小企業の借入金は経営者が個人保証するのが通例なんですよ。官僚と政治家って、商売のためにカネを借りたことのない人たちばかりだから、その構造がわかっていない」
自粛させるならカネをだせ!

小池知事による週末外出自粛が発表された4月4日の新宿・歌舞伎町。雨が降ったためか人影はかなりまばらだった

 最終的に借金が自分の身に降りかかってくることを思えば、ケガが小さいうちに事業をたたむか、営業を強行するかしかない。 「例えば飲食チェーンなどでは、今回、営業自粛を選んだ大手企業もありますね。ただ、それができるのは体力のある業者だけ。このご時世で店を開けたって客はほとんど来ないし、売り上げは二束三文。でも開けざるをえないのは、経営がしんどいからです。経営者たちは、休業するためのコストさえ補塡されれば、きっと喜んでやめますよ」  世間から不要不急と軽んじられやすい業種とはいえ、声を上げることはけっして無駄ではない。 「中小事業者の経営危機を救う融資制度から、風俗業はこれまで対象外とされていましたが、今回のコロナ危機に際して、子どもの休校のために仕事を休んだ保護者への支援の対象に、風俗嬢やホストも入ったんです。救済を求める当事者の声に世間も目を向けるようになったということでしょう」  希望はある。そう言い残し、木曽氏は夜の街へ消えていった。
自粛させるならカネをだせ!

木曽 崇氏

【木曽 崇氏】 国際カジノ研究所所長。カジノの専門家としてギャンブル業界やレジャー、エンタメ業界に精通。歯に衣着せぬ発言で諸問題について発言を続けている。著書に『夜遊びの経済学』(光文社)がある 取材・文/野中ツトム・松嶋千晴(清談社) 佐藤永記 写真/朝日新聞社 ※週刊SPA!4月14日発売号より
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週刊SPA!4/21号(4/14発売)

表紙の人/ 上戸彩

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