恋愛・結婚

42歳日雇い男には別れた妻と二人の子供がいた…離婚を決意した理由

子供との生活だけは守りたかった

不倫 そのとき、息子の健人(仮名)は8歳で小学2年生、娘の絵里(仮名)は5歳で幼稚園に通っていた。絵里はかわいい盛りで僕にべったりと懐いていた。そして僕にいたずらをするのが大好きだった。  ある日、自分の部屋で仕事をしていると、ドアの向こう側から声が聞こえた。 「ぷ―――ッ、くッ、くッ、くッ……」  絵里が僕にいたずらしようとして笑いを堪えているときの声である。さて、今回はいったいどんないたずらを仕掛けてくるのか。ドアのほうをじっと見つめた。やがてそれはゆっくりと開いた。そしてその隙間から姿を現したのはギザギザの歯を剥き出した凶暴な鮫……の絵がプリントされたアルミバルーンだった。 「うわ―――ッ!」  僕は大袈裟な叫び声をあげて椅子からドスンと転げ落ちる。絵里は「きゃはははは」と笑い声をあげ、廊下を走って逃げていく。 「コラ―――ッ、絵里!」  僕はそれを追いかけて捕まえると、お腹をこちょこちょとくすぐる。絵里の笑い声がより一層大きくなった。子供とのこんな日々だけは壊したくなかった。ソムの浮気を見て見ぬ振りをし、うやむやなままにしておくことでそれはこれからもずっと続くと信じていた。  しかし、それからしばらくしてソムとの共通の知人から居酒屋に呼び出され、はっきりとこう告げられた。 「小林君の奥さん、浮気してるよ」  相手は仕事で知り合った日本人の男であるという。知人はその男の名前と勤務先の会社まで教えてくれた。やっぱりもう終わらせるしかないのか……。僕はそんな思いに涙が止まらなくなっていた。  家に帰ってからソムを問い詰めると、彼女は観念したかのようにあっさりと浮気を認めた。そして話し合った結果、離婚して2人の子供は彼女が引き取ることになった。 離婚届 その後、ソムは浮気相手と再婚し、子供を連れて日本に移住。そのあとを追ったわけではないのだが、それから少しして僕も日本に本帰国したのだった。
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脳裏にフラッシュバックするソムの言葉
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。

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