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プロ野球開幕延期の深刻度。選手・ファン・ビールの売り子も、みんな困ってる…

さまざまな戦略がすべて水の泡に……

 一方、球団サイドもこの事態に困惑の色を隠せない。 「3月20日の開幕に向けて盛り上げてきたプロモーションが一気に崩れ去りました」と語るのは、千葉ロッテマリーンズ広報の梶原紀章氏。 「1月の自主練習から春期キャンプ、紅白戦、オープン戦と、徐々に緊迫したムードが高まっていく……。すべて開幕から逆算して情報発信してきたんです。交流戦の“挑発ポスター”など、開幕後のさまざまなプロモーション戦略も立てていました。不気味なマスコットの『謎の魚』も、そろそろ最終形態へ進化する時期でしたが、もうそんなジョークが通じる状況ではなくなってしまいました」(梶原氏)
プロ野球開幕延期の深刻度

梶原紀章氏

 選手たちは今、自宅待機、自主練習、全体練習と、球団ごとの取り決めに従って動かなければならない状態だという。 「開幕日が決まっても、体をつくるのには最低1か月は必要です。準備期間なく『明日から開幕です』と言われても動けるものではない。怪我しますよ」(同)  NPBと12球団は「6月以降の開幕を目指す」という意向を示しているが、現状ではその見通しも不透明だ。  元プロ野球選手のG.G.佐藤氏は、「今年の開催は見送ったほうがいいのでは」と語る。 「無観客で無理に開幕したとしても、遠征のために新幹線や飛行機、バスなどに乗る。ロッカールームだって密室です。観客のリスクはなくなっても、選手やスタッフのリスクは変わらない。そんな環境のなかで一人でも感染者が出たら、そこでシーズンは終わりです」
プロ野球開幕延期の深刻度

G.G.佐藤氏

 とはいえ、佐藤氏はこの開幕延期を心から残念に思っている。 「西武時代から仲のいい巨人の中島選手は、今年のオープン戦でものすごく調子がよかったんです。ロッテに行った鳥谷選手もそうですが、ベテラン選手にとっては一試合ごとが貴重なもの。一方、佐々木朗希選手のような超大型新人が、2軍のマウンドにすら立てずに過ごすというのも実にもったいないことです」  一方、元プロ野球選手で野球解説者の里崎智也氏は「NPBが期限を明確にして取り組まないと何も進まない」と指摘する。 「延期・中止を何月何日までに決定するのか。もし期日までに決まらなければ、次の期限はいつまでなのか。いつまでに結論を出すのか。そういった情報をNPBは野球関係者にきちんとアナウンスする必要があります。そうじゃないと、選手も調整のしようがない」
プロ野球開幕延期の深刻度

里崎智也氏

 今回、開幕前に阪神の藤浪晋太郎投手などをはじめ選手に感染者が出て、これが開幕再延期の原因となったのではないかと批判されている。 「今の状況を見れば、感染者が出ていなかったとしても開幕は再延期せざるをえなかったでしょう。私は、おそらく今年は無理なのではないかと思っています。このムードの中で開幕しても、世間は許してくれるのか。もしやるとしたら批判覚悟でやるしかない」(里崎氏)  しかし中止になれば、プロ野球界はさらに大ダメージを受けてしまう。 「球団は収入がなくなるので、親会社が補塡するしかない。ユニフォームについているスポンサー料、球場の看板広告料、放送ブースの維持費なども返済しないといけない可能性もある。球団だけではなく、例えばユニフォーム専門のクリーニング店だって大打撃です。プロ野球に関わる多くの人にその余波が押し寄せていきます」(同)  このプロ野球界の窮状を救うために、プロ野球ファンができることはないのだろうか。 「一日も早いコロナ終息に向かって協力し合うこと。これしかないと思います」(同)
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プロ野球を失ったファンたちの楽しみは!?
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