コロナショックが引き起こすひきこもり増加の未来
新型コロナの影響で不要不急の外出自粛が続いている。今まで感じたことのないストレスや不安などに悩まされる人たちもいるなかで、今以上に深刻な事態になりそうなのがひきこもり問題だ。昨年3月に内閣府は、40歳~64歳でひきこもり状態にある人が61万3000人と発表。’16年に発表された40歳未満の54万1000人と合わせれば、およそ115万人以上にもなる。
長年ひきこもり問題を取材し続けているジャーナリストの池上正樹氏は、「コロナショックでひきこもりになる人の数が激増することは間違いない」と語る。
「コロナによって状況や経済が悪化していく中で、解雇される人たちが出始めてきていて、それを機にひきこもってしまうケースは考えられます。また、長期的なひきこもりの場合は本人より社会に原因があることが多く、典型的なのはいじめやハラスメントなどで人を傷つけるような社会は安心できないからと、自宅に退避している状態です。
働きたくても雇用の場がなければ、皆が自粛で外に出られないのに自分が生きてるのは申し訳ないと、希望を失って復帰を諦めてしまうのが、ひきこもり傾向に陥る人たちの特性だと思います」
特に仕事上でしか人間関係を築いてこなかったような男性は危ないという。
「企業側もコロナの煽りで、一段と経営が厳しくなっていくでしょう。そうなると、今は会社に雇用されてる人でも、仕事そのものが激減し、言葉で言われなくても何となく居づらくなって追い詰められてしまうケースもあり得る。
会社を辞めた瞬間に外に出る理由を失ってしまうことがひきこもりのきっかけになるので、今はまだ救済制度があって顕在化してませんが、この状況が長引けば、そういう人たちが増えてしまう可能性があります」
また近年、問題視されているのは中高年層のひきこもり数の多さだ。80代の親が50代の子供の生活を支える「8050問題」として広がっている。
「同居しながら親の年金を頼りに生活している中高年世代は、そう簡単にはその生活から抜け出せないのが現状です。なかには、「10070」の世帯もあります。今は親と同居して家事などの役割を担いながらなんとか生活できていても、周囲との繋がりがなければ、今後、高齢の両親に万一のことがあったときに、生活に行き詰ることが懸念されます。
他人との接触に恐怖を感じている人であればなおさら、1人取り残されると不安になり、周囲の生活サポートを受けられず、生きる希望を持てなければ、孤独死のリスクも高くなります」
そんなひきこもり当事者や家族たちにとって、社会と繋がる重要な場になっていたのが支援のイベントや家族の集会だった。しかし現在はコロナによる自粛要請もあり、会場も借りられずイベントも中止せざるを得ない状況になっているという。
「一部では当事者たちのオンライン会もありますが、すべての人ができるわけじゃない。特に、ひきこもり家族会は年配の人が多くて、これからネットを使いこなしていくのも難しいと思います。コロナ前から問題に向き合って疲弊している家族は多いですから、愚痴を言ったり、相談したり、支え合える存在がなによりも重要ですし、私のところにも『直接、出会える場がなくなってしまうのが困る』という相談が増えています。
外出できずに家にいる家族のストレスが溜まって、ひきこもる本人に不満の矛先が向かうようなことがあれば、思わぬトラブルや最悪の修羅場を迎えてしまうケースが出てきてもおかしくないですよ」
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