[ゼロ円・趣味道]銭湯巡りは人情の温かさ=プライスレス
―[[ゼロ円・趣味道]の極め方]―
「趣味を楽しむ余裕もない」……なんて嘆き節もよく聞くが、実はカネをかけずとも楽しめる趣味はたくさんある。その人が熱中できて楽しいことが、それすなわち趣味。楽しいことに夢中になっている人々は、やぱり幸せそうなのである――。
◆銭湯巡り 入湯代 450円
人情の温かさ=プライスレス
【こてっちゃん馬場さん・お笑い芸人】
「銭湯はラブ&ピースなんです」。こう、銭湯の魅力を語るのは、都内350箇所余りの湯に入ってきた銭湯好きの芸人、こてっちゃん馬場さん。6年程前に交通事故で負傷し、リハビリ目的で銭湯のジャグジーに通い始めたのが始まりだったという。
「銭湯に行くと、孫がじいちゃんの背中を流す光景があったり、番台のおばちゃんが和菓子をごちそうしてくれたり。昭和の香りっていうんですかね、人情味があって温かいんです。なにより、銭湯のお湯の前ではみんな裸。平等なんですよ。金持ちも貧乏も、東大卒も中卒も関係ない。でかい事務所だからどうとかもない(笑)。正直、つまづきだらけの人生でしたよ。彼女どころか、キャバ嬢の同伴にすらドタキャンされてきた僕ですが……でも銭湯はドタキャンしないし、行けば必ず僕を温めてくれるんです!」
そんな、銭湯の湯よろしく熱く語る馬場さんが今、夢中になっているのが、東京都浴場組合が行っている、都内約880の銭湯を巡るスタンプラリー。馬場さんは2年半で300か所超をまわった。
「行ける時は月15~20回は行きます。これだけ行くと、肌にあたるお湯の微妙な感触の違いもわかるようになりました。でも、スタンプラリーのために1日2軒行くのは邪道。番台のおばちゃんに挨拶をして、湯の中でじいちゃんと話したり、風呂上りに牛乳飲んだりして満喫しないと。中には鯉が泳ぐ池があったり、観察すると面白いんですよ。最近はマニア化してきて、煙突の煙が出てくる瞬間まで見届けてます」
とはいえ、馬場さんは1軒で40分以上の滞在はしないというマイルールを己に課している。なぜなら、「大衆的な料金でやってるので長居は迷惑になる」から。
銭湯への思い入れはかくも深き馬場さん。もう、「アパートに一応ついている、ないに等しいボロ風呂には入れない」という。しかし聞けば日々の生活は「極貧」状態だとかで、1回450円の利用料と交通費は大きな出費では?
「回数券を使っているので、1回あたり420円ですから。でも、もし仮に財布に500円しかなかったとして、空腹で仕方がなかったとしても、僕は迷わず銭湯に行きます。行けばきっと、誰かが食わせてくれる。銭湯にはラブ&ピースがあるんですから」
銭湯のお湯と人情の温かさは、プライスレスなよう。
馬場さんが「風情は東京一」と絶賛する足立区北千住の「大黒湯」。
ブログ「こてっちゃん馬場の東京銭湯めぐり」でも紹介されている。
「銭湯寄席をやるのが目標」という馬場さんも出演するライブ
「お笑い波離間投げ」が’10年3月31日、お江戸両国亭で開催
写真/難波雄史
取材協力/大黒湯 足立区千住寿町32-6 15~24時 月曜定休 電:03-3881-3001
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