仕事

客の暴言に耐え忍ぶコールセンターでの日々…僕はサンドバッグじゃない

公園でひとりヤケ酒を飲む

公園 そして遂に2か月の契約期間終了の日を迎えた。約20人いた同期のオペレーターもそのときには僕を含めてたったの5人しか残っていなかった。僕は契約期間延長の誘いをきっぱりと断ってオフィスをあとにした。  帰り道のコンビニで缶ビールを1本買い、公園のベンチに座って飲んだ。アルコールが体に回っていき、それと同時に体の内側からブルブルと震えが走る。 「うううううう……」  呻き声を漏らしながら空になった缶をグシャリと握り潰した。感情は決して消えていたわけではなかった。ただ心の奥底に押しやって蓋をしていただけだった。それがアルコールによって徐々に解放されていった。  ベンチの鉄の手すりに自分の額を強く打ちつけた。ズキリと鈍痛が走る。が、それでも構わずに何度も打ちつけ続けた。ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ……。  やがてくらくらと目眩がしてきたのでそこで止めた。別に死にたいわけではなかった。ただ悔しかった。どうしようもなく悔しかった。  自分らしく生きたかった。そのために不本意なことばかり書かされるライターの仕事から離れ、小説を書くことに専念しようとした。しかし、それではまったく収入にならず、結局はお金のために不本意な仕事をやる羽目になる。自分らしさを捨てて生きながらえるか、それとも、ありのままの自分で野垂れ死にするか。どうして僕の人生にはその二択しかないのだろう……。  ベンチに横になって目を閉じた。すると、暗闇の中でまるで痛みそのものが命を宿しているかのようにいつまでもズキズキと鼓動していた。<文/小林ていじ>
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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