チンピラ社員からゲキが飛ぶ、ゴミ分別の日雇い派遣で悟った小さな恋
―[42歳日雇い派遣男のリアル]―
“日雇い派遣”と聞けば、一般的に過酷なイメージがあるはずだ。なかには完全な肉体労働もあるが、実際にはさまざまな職種があり、ある程度は希望に合わせて働くことができる。男性だけではなく、女性もいる。僕は日雇い派遣で飲食系の仕事をやることが多かった。が、希望通りにいかないこともある。
ある日、いつものように派遣会社に電話して訊いた。
「明日、飲食系の仕事はなにがありますか?」
「飲食系はないですね。箱詰めのライン作業とかありますけど、どうですか?」
工場や倉庫の軽作業はあまりやりたくなかった。が、飲食系の仕事がないということなので、仕方なくそれを受けることにした。
駅前で派遣の人たちと待ち合わせ
別れ際に千里から手渡されたもの
帰りも千里といっしょだった。同じバスに乗って駅に到着する。電車は別だったのでそこで別れようとした。
「ちょっと待って」
しかし、彼女に背を向けようとしたところを呼び止められた。彼女はバッグからスニッカーズを取り出して僕に手渡す。
「え、これは?」
「ちょっと早いけど、バレンタインチョコ」
「あ、ああ、ありがと」
「楽しみにしてますよ、ホワイトデーのお返し」
千里はそう言って立ち去っていった。僕は駅の雑踏の中にしばらく立ち尽くし、手の中のスニッカーズをじっと見つめた。
これまでも日雇い派遣の仕事で女の子との出会いはあった。そしてそれなりに仲良くなることもできた。が、それ以上は決して踏み込むことはなかった。僕の年齢で若い女の子にアプローチをかけるなんてみっともない真似をしてはいけない。楽しく会話ができただけで満足しなくてはいけない。そう思っていた。千里の行動は僕のそんな考えを覆して淡い期待を抱かせるには十分すぎるものだった。
それからは飲食系だけでなく、軽作業の仕事にも積極的に入るようになった。千里とは連絡先の交換などはしていなかったので、彼女に再会してホワイトデーのお返しをするにはそうするしかなかった。
いったいどんなものをお返しすれば千里は喜ぶのだろう。クッキー? マカロン? いつ会えるかわからないのだから、常にバッグに入れておいたほうがいいだろうか。いや、仕事が終わってから彼女のリクエストを聞いていっしょに買いに行ったほうがいいかもしれない。それとも食事でも……。そんなことをにやにやと考えながら軽作業の仕事を続けた。しかし、いつになっても彼女に再会することは叶わなかった。そして遂には3月14日のホワイトデーも過ぎてしまった。
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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