更新日:2020年06月08日 00:22
エンタメ

まゆゆファンの女性編集者が見た、完璧すぎるアイドルの苦悩と輝き

 実際、20歳ころを境に、それまでの「美少女」の枠にとらわれない活躍ができていたのではないかと思います。テレビ番組やライブのMCでは、気の利いた、肩の力の抜けたユーモラスなコメントを多く耳にするようになりました。  たとえば2015年の選抜総選挙では、前年の首位から3位にランクを落としたにも関わらず、出番の直前に、高橋みなみが前田敦子から花束を渡されるシーンがあったことを受け、「たかみなさんと前田さんの感動的なシーンのあとで『出づらっ』と思ってたら、本当に呼ばれてしまって」と、すっきりした表情で笑いを取っていました。

突然イメチェンするのではなく、ゆっくり「大人の綺麗な女性」へ変貌していった

 特徴であったアニメキャラクター風の外見からも、じつはうまく脱皮を遂げていた印象です。完璧さを保つため、前髪の長さひとつ、眉毛の位置ひとつにも細かく気を使っていたまゆゆですが、女性誌でモデルを経験した影響もあるのでしょう、いつのまにか「大人の綺麗な女性」に変貌しました。万人受けする自然な美貌には、もはやかつての「男ウケするサイボーグ」の影はどこにもありませんでした。  ある日突然イメチェンするのではなく、常にファンの期待に応えながら、ゆっくりと確実に成長していくのも、彼女らしさであったと思います。
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渡辺麻友卒業コンサート~みんなの夢が叶いますように~(DVD5枚組)より

 2017年に、満を持してAKB48を卒業。卒業後のまゆゆに対して、私はいちファンとして、当然のように、さらなる飛翔を願っていました。『なつぞら』の好演が評価されれば、自分のことのように嬉しくなったりしました。    ただ、その喜ぶ気持ちのどこかに、「まゆゆだもん、当たり前だよ」という思いがなかったとはいえません。“完璧である”ことが当然すぎたまゆゆ。芸能界という、AKB48よりもさらに広い世界に飛び出した彼女に対して、身を案じながら、一方で「それを常に乗り越えるのがまゆゆ」と勝手に期待していたことは、否定できません。  我々ファンのそういう気持ちも、もしかしたら、彼女を追い詰めていたのかもしれないと、今となっては思います。

まゆゆが我々ファンを信じてくれたように、我々もまゆゆのことを信じています

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『まるっとAKB48 2 with SKE48&NMB48&SDN48&HKT48』(光文社刊)より

 2011年に発行された雑誌『まるっとAKB48スペシャル2』(光文社刊)に、まゆゆのこんなインタビューが掲載されていました。 「私はもう17歳。人生の折り返し地点だと思っています。高校生最後なので、もう甘えてもいられない」「悩み事とか家族にも相談しないし、自分のことを深いところまでほかの人に知られたくないんです」……初期のまゆゆの言葉をおさめた、貴重なインタビューです。  これを読んだ私は、当時こんなことをツイートしていました。 「しかし当然ながら、20歳を過ぎてもAKBが解散しても人生は続いていく。そのとき、まゆゆがそのときなりに人生を楽しくサヴァイブしてくれればいいなって、超おせっかいだけど思っちゃう。『少女』の呪縛は根深いけど、意外とうまく付き合っていくことはできる。何もかも諦めて閉めだす必要はない」  今回のまゆゆ芸能界引退について、稀有な才能が失われて残念だという気持ちは、もちろんあります。ただ、まゆゆが本当の意味で自由になれたなら、それは本当に、喜ばしいことだと思います。  だってまゆゆは、可愛くて、綺麗で、頭がよくて、真面目で、努力家で、面白くて、情熱的で才能豊かで、とても魅力的な人だから。  まゆゆが我々ファンを信じてくれたように、我々もまゆゆのことを信じています。胸を張って心から自慢できる女の子、それが渡辺麻友です。  だから今、強い気持ちでこう伝えたいです。あなたの完璧さに惹かれていましたが、同時に、完璧さだけを愛していたわけではない。何よりも、世界に立ち向かう姿を尊敬していました。一緒の時代にいてくれてありがとうございました。<文/ガーリエンヌ>
編集者。雑誌編集部在籍時は、芸能インタビューを数多く担当。また主宰するガーリーカルチャーZINE&WEB「花園magazine」では、過去複数回AKB48に関する対談を掲載。ツイッターアカウントは@girliennes
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