更新日:2022年08月06日 02:22
仕事

「テレワークで出世する人/しない人」人事はどこを見ている?

評価されるマネージャーのあり方にも変化

 ただ、数字で示される結果は市場環境が大きく影響します。そのため、本人や当該部署だけの努力によるものだけではなくなるので、数字による評価はわかりやすいようでいて、きちんとやろうと思うとすごく難しいことになります。さらに「withコロナ」の中で出てくる数字をどう評価するのが適切なのか、その正しい答えは誰にもわからないわけですから仕方ありません。  目標達成に重きを置きすぎると、伸び盛りの部門の人だけが評価され、市場が縮小しつつある部門の人が評価されにくくなり、不公平感によって人の定着も難しくなるという問題も発生します。現実はそんな愚を犯している会社はたくさんありますが、ダウントレンドのマーケットにいる人間はどうしても高い評価を得ることはできないシステムには大きな問題があるわけです。  余談ですが、筆者が生業としている雇われ経営者の世界でも、ダウントレンドからV字回復させるのと、普通に利益が出ている巡航速度の会社を伸ばすというのとでは異なるタイプの難しさがあります。  ただし、一般的には前者のほうが難易度が高いにもかかわらず、前者は会社そのものが儲かっていないので報酬が安く、後者は異常に高いという現実があります。フェアに人材市場で評価されているものと思いきや、その現実を知ったときには大いにがっかりしました。  さて、本題に戻ります。仕事の遂行度や目標達成度など、課された業務の成果のみを評価要素として見る「業績評価」が難しいとなると、過程を重視する「プロセス評価」を充実させていこうという流れになります。「プロセス評価」は今までも実施されていたことですが、担当している仕事が進んでいるのか否かは究極的には当事者しか実態はわからないため、どこか曖昧にはされてきました。 nakazawa3 それがほかの人からもわかりやすく見えやすくガラス張りでやっていこうとすると、評価する管理側の在り方も変わっていかなければなりません。目的と目標、そこへのプロセスを設計できて、それをもとに追いかけていけるような高度なスキルが求められます。かなり完成度の高いマネジャーしか評価されなくなっていくため、むしろそれができる人の希少価値が相当上がってくるかもしれません。  そうなると、最終的には評価を行う側も面倒になってきて「えいや」で若干の好き嫌いが入りながら「ごちょごちょっとなった結果」が出ることに。結果的に真面目に働いてきた多くの人にとっては今までと変わらないのかもしれません。会社によってはわかりやすいアピールする人だらけになっていって、社内の議論において中期的な目線が抜けて刹那的になり……という混乱が起こることもあるかもしれませんが、慣れの問題として収束していくでしょう。  ただし、以前の記事に書いた「テレワーク忍者」、要するになんとなくにぎやかしのような存在で目を付けられていなかった「実は働いていない人」には容赦ない未来が待っている可能性が高いはずです。

「宴会機能」はどうアップデートされるのか?

 また、会社内で発生する新しい仕事としては、テレワークの弱点を補足する仕事が出てくると推測されます。それはかつては「宴会」と呼ばれるものでフォローされていた機能の逆のことかもしれません。  宴会には「実務をしっかりやっているけれども目立たない人」ともきちんとコミュニケーションを取るような機能があったと思います。それとは逆に、実務を人質にして過剰に権力を持ってしまう人と組織運営上の権限のある人とのパワーバランスを維持するようなことが求められてくるのではないかと推測しています。  結局、やることは「コミュニケーションを深める」ということで一緒ですが、少し意味合いが違ってくるのかと思います。今まで甘い汁を吸っていた、あるいは状況に甘んじてサボっていた一部の人にとっては居場所や役割を改めて探さないといけないでしょう。  ただ、こうしたゲームチェンジは個別の企業を見れば、オーナーや社長が変わる際、旧体制派の人たちが排除されるというかたちでこれまでも起こり続けてきたこと。それが今後、日本中で一斉に起こるという状況になっていくというわけです。
株式会社リヴァイタライゼーション代表。経営コンサルタント。東京大学大学院修了後、投資会社、経営コンサルティング会社で企業再生などに従事したのち、独立。現在も企業再生をメインとした経営コンサルティングを行う。著書に『好景気だからあなたはクビになる!』(扶桑社)などがある
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