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「どこへ出しても恥かしい70歳」友川カズキとは何者なのか?

あの映画の出演オファーを断った過去も

 あらゆる方法で、表現活動をする友川氏。表現の方法をどう選択しているのかと聞くと「選んでない。全部が同時進行で、同じところからはじまってる感じです。この表現方法が一番というのもないしね」との返答があった。  とはいえなんでもやるわけではなく、1983年に公開された大島渚監督の映画「戦場のメリークリスマス」では、主要キャストでのオファーがあったにもかかわらず、出演を断った過去がある。第三者からするとかなりもったいないように感じるエピソードだ。 「あれはチャンスだったんだけど、秋田訛りが直せないからですよ、断った理由は。試写会も招待されて作品もみたんですけど、やっぱり私には無理だったなと思いましたね。できる仕事はほとんど断らないんですけどね。あれは自分にはできなかった」

70歳までヒット作がなくても続ける理由は…

友川カズキ

「引退」なんて言葉は自分には合わない

「これまでの創作活動で『ヒットが一度もない』」  そう自嘲する友川氏に、引退を考えたことはなかったのか? 率直に聞いてみた。 「引退なんて言葉は、何かを成し遂げた人のためにあるから、私には合いません。こっちはずっと競輪をしてるだけなんだから。咲いてもいないのに散る花みたいな(笑)。でも、50歳くらいの時に、やめようかと考えたこともありましたよ。歌うってのは半端なテンションではできないから、体もキツいしね。でも歌ってくれと言われることもあるし、もう少しツバを吐いていたいし。まあ惰性です(笑)」  あらゆる衝動を表現に昇華しながらも、そこには社会的メッセージが込められているわけではなく「友川カズキ」の激情そのものが横溢している。自身では惰性といいながらも、若い頃に得た衝撃の爆発が、血の通った表現として今も続いている。どうやら、まだまだ私たちを友川カズキの世界で楽しませてくれそうだ。<取材・文/Mr.tsubaking 撮影/鈴木大喜> ■友川カズキ 1950年秋田県生まれ。1974年のレコードデビュー以後、計30作を超える作品を発表。代表曲に「生きてるって言ってみろ」、ちあきなおみに提供(作詞作曲)した「夜へ急ぐ人」などがある。執筆や画家としての活動も並行して行い、80年代以降は絵画個展を多数開催。2010年、ヴィンセント・ムーン監督によるドキュメンタリー映画『花々の過失』が国内公開された。2018年6月には、友川流競輪賛歌「夢のラップもういっちょう」などの楽曲を含むベストアルバム『先行一車』をリリース。2019年、エッセイ・詩などをまとめた『一人盆踊り』(ちくま文庫)を上梓し、2020年、佐々木育野監督によるドキュメンタリー映画『どこへ出しても恥かしい人』(全国順次公開中)が公開され、各方面で話題を呼んだ。コロナ禍の現在においても、ライブ配信、YouTubeチャンネルの開設など、旺盛な活動を続けている。
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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