エンタメ

「どこへ出しても恥かしい70歳」友川カズキとは何者なのか?

競輪にしかないドラマ

 冒頭でも記した通り、友川氏は大の競輪好きとしても知られる。スポーツ紙に予想記事を書くこともあり、一部では著名な存在なのだ。数あるギャンブルの中で、なぜそこまで競輪を愛しているのだろうか? 「私が思うに『競輪は読み物』だからですよ。ドラマがある。競馬はエンジンが馬で競艇はエンジンが機械ですけど、競輪は人間自身がエンジンなんです。そこに思惑だとか相性というのが絡んで、人間のズルさも出てくるんです。そういうところを含めて、競輪にはドラマがありますからね」  元々ギャンブルが好きだった友川氏が競輪にハマった背景には、何人かの有名な脚本家の存在があった。 「脚本家の加藤正人さんって人がいるんですよ。25年くらい前に、彼から電話で『友川さん、競輪行きませんか?』って爽やかな声で言われてね。脚本家って競輪好きが多いんですよ。一番すごかったのは、黒澤明の脚本なんかもやってた橋本忍。あの人は黒澤明と会う前に、何レースか打ってから行くんですから。『私が死んだら、棺に(競輪専門紙の)赤競と赤ペンを入れて欲しい』って言ってたそうです(笑)」

本命には手を出さないワケ

友川カズキ

人生で一番大事なのは『血の気と色気』と語る

 映画『どこへ出しても恥かしい人』を観ればわかることだが、競輪ファンの間では友川氏がいつも“大穴狙い”であることはよく知られている。本命車券にはほとんど手を出さない。 「カタイの(本命)は、貧乏人には買えないからさ(笑)。あれは大金持ちが買うもの。それに、カタイので勝っても嬉しくないでしょ。そんなもんギャンブルじゃないですよ。100万円勝つためにやるのよ、3000円ほど勝ってどうするんだよ?っていう話で」と、独自の理念がある。 「ほとんど当たらないけど、何度か大穴でいい思いをさせてもらいました。いつもは、競輪場に入る時に100均の帽子をかぶってますけど、その時は、競輪場から出たらその足で帽子屋に行って、6万円近いボルサリーノを買いました。そういう『全身の血が入れ替わる』ような体験をしたいんですよ、私は。人生で一番大事なのは『血の気と色気』だと思ってます」
次のページ
70歳までヒット作がなくても創作を続ける理由
1
2
3
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

記事一覧へ
おすすめ記事