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お年玉にまつわる悲喜こもごも。5000円もフンパツしたのに

奮発して5000円も包んだのに…

しめ縄 約15年前、吉田まなかさん(仮名・40代)が1歳にも満たない子どもを連れて義実家に帰省した時のエピソード。 「年末の混んでいるなかを新幹線で帰ることが億劫でした。まだ子どもが小さかったので。他の人に迷惑にならないように、約5時間も移動しなければならなかったからです」  そして、それ以上に憂鬱だったのが、義理兄夫婦とその子どもたちに会うことだった。義理兄夫婦は車で1時間程度で帰省できるところに住んでいたのだが……。 「私は、その義理兄夫婦に会うことは初めてでした。なので、手土産と6歳と4歳の兄妹のために奮発してお年玉5000円ずつ包んで用意しておきました。そして、義理嫁が妊娠中ということもあり、気を遣って子どもたちの相手もしなければならず、おまけに、まだ小さい我が子にも手が掛かるので、非常にストレスを抱えていました」  夫は甥っ子ばかりを相手に、義理兄夫婦は2人だけで出掛けてしまい、義父は特に何もせずの状況だったという。そんなこんなで、初めての義実家で右往左往しつつ迎えたお正月だった。 「朝起きてきた子どもたち2人に、『あけましておめでとう、お年玉だよ』と渡しました」  ところがその後、吉田さんを唖然とさせる出来事が。 「お年玉へのお礼もなく、いきなり2人は袋を開け、『5000円入ってる~』と大きな声で義理兄夫婦と義父に報告したのです。すると、『そうか、そうか』との返事のみ……』  その場で袋を開けて確認することに対して、一気に怒りがこみ上げてきた吉田さん。まずは、両親に貰ったことを報告するのが常識なのではと思ったという。  金額をみんなに伝えている子どもたちを見て、モヤモヤした気分だったそうだ。 「ちなみに、うちの子は小さいからと、義理兄夫婦からも義父からもお年玉は貰えず……これこそあげ損ですよね」  15年経った今でも忘れられないお正月として印象に残っている。吉田さんは、今は笑い話にできるけど……と当時を振り返った。

大好きなお爺ちゃんからサプライズのお年玉に感動

 ここまではお年玉にまつわる「悲哀」をお届けしたが、最後にほっこりするエピソードを紹介したい。  戸田尚弘さん(仮名・20代)は小学校2年生の時、親戚たちと集まって食事をしていた。食事中もお年玉を貰うことで頭がいっぱいだったという。 「食事の後は、いよいよ待ちに待ったお年玉が渡される。子どもだった僕は大はしゃぎです。その年のお年玉はひとり1000円くらいでしたけど、今から思うと少ないですよね。でも、子どもの僕から見たらこれだけあれば何でもできると思えるほどの大金でした」  家族ひとりひとりに「ありがとう」と伝え、ひと通りお年玉を貰い終わった。そして最後に、お爺ちゃんから貰う時がきた。 「お爺ちゃんから『お年玉渡すよ~』と言われ、部屋に行きました。そしたら、なんと2000円だったんです。その時の僕は1000円の2倍のお年玉を貰って大はしゃぎでした。親戚のみんなに『お爺ちゃんから2000円貰った』と見せびらかすぐらいに興奮していたと思います」  母親にお礼をしてきなさいと言われ、嬉し過ぎてお礼をしていないことに気がついた戸田さん。急いでお爺ちゃんのお部屋に行くと……。 「僕はお爺ちゃんに感謝の気持ちを込めて、ぎゅ~って言いながらハグをしました。すると、お爺ちゃんは立ち上がって喜び、財布の中からまた2000円を出したのです」  お爺ちゃんは、「来年の分も渡そう」と言ってサプライズのお年玉を渡してくれたという。戸田さんは、その時のお爺ちゃんの顔がこれまで見たこともないくらいの笑顔だったことを今でも覚えていると話してくれた。  子どもたちにとっては、1年に1度の大イベントと言っても過言ではないお年玉。お金を数える楽しさを覚えたのがお年玉だったという人も多いかもしれない。あげる側の年齢になると、金額やどこまでの親戚にあげるのか悩むこともあるが、子どもの嬉しそうな顔を見ることができるのもお正月のお年玉における醍醐味なのだ。<取材・文/chimi86>
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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